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【道路を問う】

第1部 特定財源の現場<下> 高速値下げへ税2兆円 油高騰に業者悲鳴

2008年1月26日

各地からの長距離トラックであふれ返る深夜の海老名サービスエリア=神奈川県海老名市の東名高速道路上り線で

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 グルグルグルグル…うめき声にも似た重たい大きなエンジン音が、一斉に夜気を揺らしていた。

 底冷えがする東名高速道路上り海老名サービスエリア(SA、神奈川県海老名市)。二百台近い大型トラックがあふれ、何時間も待機する光景が毎夜繰り返されている。

 「トラックの待機はETCの夜間割引制度の導入で、各地で目立つようになった。燃料高で増えた気がする」。京都−東京間などを月八回往復する長距離トラックの男性運転手(46)は言う。上りなら料金所の手前の海老名SAで待ち、午前零時を過ぎて出れば三割引きとなる。

 三年余りで一・六倍以上に跳ね上がった軽油代の高騰は、この男性運転手の給与を直撃した。三年前に年二回で計百万円あったボーナスは今は四十万円。高速料金を節約するため、長いときには五、六時間も待機する。疲れ切って仮眠していると目覚まし時計を三つセットしても起きられない。

 一リットル当たりの軽油引取税は三二・一円で、うち暫定税率による上乗せは一七・一円に上る。男性は「暫定税率は撤廃してほしい。けど、地方が立ちゆかないのもな…」。

 別の男性運転手(34)も年三十万円ほどあったボーナスが半減。週末に飲食店でアルバイトをした時期もある。「燃料代が上がれば上がるほど、身が削られていく。先行きも見えない」。二人暮らしの母親(67)は寒い日もストーブを我慢しているようだという。

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 「高いといわれる道路通行料を軽減するためにも、道路特定財源が必要だ」。冬柴鉄三国土交通相の大きな声が、巨大なトンネルに響いた。

 昨年十二月二十二日に行われた首都高速中央環状線「山手トンネル」の開通式。池袋線と新宿線の間の約七キロを地下で結ぶ。華やかな雰囲気の中、冬柴氏はあいさつの半分を割き、暫定税率の維持に理解を求めた。

 都心をぐるりと囲むように整備が進む中央環状線。今回の完成分と二年後に渋谷線まで延びる区間を合わせた部分だけでも事業費は計約一兆五百億円。地下化などで工事費が膨らみ、ざっと一キロ一千億円だ。民営化した首都高会社が事実上、料金収入で返済する債務残高は、六兆円近くにもなる。

 首都高は今年秋、利用した距離に応じた「距離別料金制」を導入する。現在の案では普通車(東京線)の場合、七百円均一から四百−千二百円に。短距離なら値下げになるが、利用距離の長い運送業者らは実質、値上げになる。

 十数台の車両を抱える都内の運送会社社長(66)は「冗談じゃない。民営化なんてしねえ方がよかった」とぶちまける。

 政府・与党は昨年十二月、二〇〇八年度から高速料金を値下げする方針を決めた。そのため、各高速道路会社が事実上抱える債務の一部肩代わりに、向こう十年間で道路特定財源から約二兆円を投入する。

 道路関係四公団民営化推進委員会の委員だった評論家の大宅映子さんは「料金は経営努力で下げるべきで、せっかく民営化したのに意味がない。道路財源が余っているからこその発想だ」と批判する。

 民営化の内情をよく知る道路公団関係者が打ち明ける。「四公団の債務返済には税金を投入しないことになっていた。だが、国交省は当時から、料金値下げと引き換えに今回の税金投入を画策していた。そのことを国民は知らされていない」(この企画は今村実が担当しました)

<距離別料金制> 首都高は距離別制度への移行について「距離にかかわらず同一料金なのは不公平との声が寄せられていたため。ETCの普及で技術環境も整った」としている。東京線の料金案によると、利用距離が19キロ未満は現行と同じ(普通車700円)か値下げだが、19キロ以上は距離に応じて値上げとなる。

 

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第4部 「一般化」の裏で

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第3部 怪しい優先順位

第2部 浪費の現場

第1部 特定財源の現場

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