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【道路を問う】

第2部 浪費の現場<中> 懇親名目 緩んだ『財布』 カラオケなど娯楽品次々

2008年3月4日

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 ブドウ畑が点在する山梨県笛吹市ののどかな住宅地。民家にしては横長の平屋がひっそり立つ。国土交通省甲府河川国道事務所の職員が災害時に待機する詰め所だ。ここでつい数年前までは、夜になると場違いなカラオケの歌声が響いていた。

 事務所は一九九七年三月、職員の福利厚生を名目に九十七万五千円もする豪華カラオケ機材を購入した。業務用の本格的な機種で、約三百枚のCDを内蔵していた。購入費に充てられたのが道路特定財源だった。

 当時の幹部は「必要性はあったと思うが、具体的には覚えていない」と繰り返すばかり。関東地方整備局は「懇親会や災害の慰労などで使われたのではないか」と話す。

 カラオケ機材は四、五年前、アンプの電源が入らなくなり放置。昨秋、倉庫に運び込まれ、ほこりをかぶっていた。

 「修理は考えていない。捨てるため手続き中」と同整備局。詰め所も老朽化を理由に近く取り壊す。

 まるで自分たちの財布とでも勘違いしているのだろうか。役人たちの道路財源の無駄遣いが次々と明るみに出ている。

 浅尾慶一郎参院議員(民主)に国交省が開示した資料では、二〇〇三年度からの四年間で、全国の国道事務所などは約二百三十五万円分のスポーツ用具などを購入。このうち近畿地方整備局管内では、野球のユニホーム三十着(約二十六万円)、グラブ十三個(約十三万円)、バドミントンシャトル三百個(約七万円)など、約百四十五万円相当を買いあさっていた。

倉庫に保管され、近く廃棄されるカラオケ機材=甲府市で

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 同整備局は「時間外のレクリエーションなどに使った」と言うが、管理台帳に載っているのはソフトバレーボールの支柱(約四万九千円)だけ。「あとは消耗品扱いで大半は残っていない」

 ほかに目立つのは工事用以外の乗用車。全国で計約四百台(十億円余)あり、四分の一は高額なハイブリッド車だった。新潟県上越市の高田河川国道事務所の黒塗りセダンは約三百九十万円。「カーナビなど諸費用が含まれている。主に所長が他機関と意見交換をする時の移動などに使っている」

 道路建設を意味する「道普請」(みちぶしん)。これを題名に使ったミュージカルなどが〇三年度から四年間、全国で九十五回上演された。演じたのは東京の劇団で、題材は太古から戦後に至る道づくりだった。

 〇四年秋、このミュージカルについて、国交省の官僚がある講演会で、建設業者らを前に狙いを明かした。「正しい主張もユーザーや住民に伝わらなければ意味はない。楽しみの中に正論を忍ばせる工夫が重要だ」。そのために約五億七千万円の道路財源が使われたのだった。

 国会で冬柴鉄三国交相は顔をこわばらせた。「道路事業を円滑に進めるための啓発活動だった。今後はしない」と。

 まるで「官」のポケットマネーのような道路財源。ミュージカル問題を追及した保坂展人衆院議員(社民)は、使途の不透明さを指摘する。

 「さまざまな支出が道路事業費に紛れ込み、何にどう使われているのか分からない。すべてを検証してみるべきだ」

<“道路ミュージカル”> 各地の国道事務所などが東京の特定の劇団と契約。上演費は1回あたり300万円前後で、ほかに会場代やチラシ代も道路財源で賄われた。公演は04年度が36回と最も多く、06年度は10回。観客は1回平均1000人ほどだったという。

 

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第4部 「一般化」の裏で

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第3部 怪しい優先順位

第2部 浪費の現場

第1部 特定財源の現場

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