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【道路を問う】

第4部 「一般化」の裏で<下> 族議員地元 一枚岩ひび 陳情の裏、冷めた民意

2008年5月13日

「紀伊半島一周道路行進」の最終日にあいさつする二階氏。前列左から2人目が仁坂知事=4月29日、和歌山市で

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 「インターチェンジ(IC)の名称のことで一度、(和歌山県)有田市長に会ってくれるか」。昨年夏、西日本高速道路(大阪市)の石田孝会長の元にそんな電話があった。

 相手は自民党の二階俊博総務会長。地元の同県を走る阪和自動車道の吉備ICと湯浅御坊道路の吉備南ICの名称を、みかんで有名な「有田」「有田南」に変えてほしいというのが、有田市長らの要望だった。

 「二階さんから名称変更まで頼まれたわけではない。後日、市長らと会った際は『ほかの町村も納得していますか』と念押しした」

 そう振り返る石田氏は神戸製鋼出身。道路公団民営化で西日本の会長に就く以前から二階氏と親交があった。元公団幹部が言う。「ICの名称変更は看板や地図の書き換えなどで費用がかかる。長年慣れ親しんだ客が、出口を見落とすこともあり、会社は変えたくないはずだが…」

 だが、陳情から数カ月後に名称は変更された。西日本の負担は約六千万円。民営化後、ICの名称変更はここだけだ。東日本管内ではまだ一件もない。

 西日本広報室は「費用がかかることなので地元自治体と協議会をつくって検討した」と妥当性を強調した。

 今年一月、東京・永田町の自民党総務会長室。二階氏は地元のかつらぎ町長ら約十人の陳情を受けた。大阪府との境にある国道480号「府県間トンネル」について、国土交通省の直轄事業に格上げして着工してほしいということだった。

 二階氏はその場で国交省道路局長に電話をかけ、「皆が今からそっちに行くからよろしく」と話し、財務省主計局の幹部にも電話を入れた。町長らには道路財源の暫定税率維持に向け、「県一丸となって頑張ろう。地元ももっと声を出してくれ」とハッパをかけた。

 有力道路族として存在感を増す二階氏。二〇〇六年には経済産業相時代の部下に当たる同省OBの仁坂吉伸氏を和歌山県知事に擁立、県議会議長も元秘書が務めるなど地元は盤石に見える。

 先月二十九日、県民文化会館前に二階氏や知事、市長らが一堂に姿を見せた。失効した暫定税率復活をアピールするため、県内全首長らがリレー方式で歩いた「紀伊半島一周道路行進」の最終日。知事らは一斉に民主党を批判し気勢を上げた。

 大会終了後、二階氏は取り囲んだ記者に強調した。「和歌山は三十年も前から高速道路紀伊半島一周を(目標に)やっている。いかなる反対や妨害があっても(道路財源関連法案の再可決を)やっていこうと。それが地域の熱意あふれる声だ」

 だが、この日の盛り上がりとは対照的に、各世論調査では一般財源化と暫定税率の廃止を求める声が大勢だ。

 二階氏にトンネルを陳情したメンバーの一人も「町は深刻な財政難で、医療費や教育費を切り詰めている。本音を言えば、道路財源を自由に使えるようにして地方に移譲してほしい」と打ち明けた。

 盤石の地元と民意とのずれ。半世紀続いた道路特定財源制度の終わりは日本の構造を変える可能性を秘める。その未来を決めるのは有権者でなければならない。

 (杉谷剛、大村歩が担当しました)

 

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