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【道路を問う】

第4部 「一般化」の裏で<中> 予算凍結『住民に脅し』 関心高い教育、福祉狙う?

2008年5月12日

栃木県の後押しで県内の建設業者らが暫定税率復活を求めて国会周辺をデモ行進した=4月15日、東京・永田町で

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 「ガソリンの値下げが回りまわって、どうして医療費の値上げになるの? さっぱり分からないわね」

 先月中旬、ベビーカーに乳児を乗せた宇都宮市の主婦(34)は何度も首をひねった。

 栃木県が七月から乳幼児や妊産婦の医療費負担を、五百円から千円に引き上げると発表したからだった。

 県は先月一日にガソリン税などの暫定税率失効で歳入に穴があくとして、道路整備だけでなく、一般事業約五十億円分の執行留保と先送りを決めた。医療費値上げの方針もその一環だった。

 執行留保には私立学校への助成(二億二千万円)、私立幼稚園への助成(三億七千百万円)など、県民の関心の高い事業が多く含まれたが、県財政課は「各部局に削減額を機械的に割り振っただけ」と言い切った。

 だが、県幼稚園連合会理事長の石嶋昇さんはこう語る。「暫定税率がなくなるとこうなるぞ、というインパクトのあるものが選ばれた感じだ」

 実際、県議会自民党の狙いは見え見えだった。同月八日の県議会全員協議会。須藤揮一郎副知事が「執行留保の中身を公表して、県民に不安を与えるのはいかがか」と答弁すると、自民党の五十嵐清県議がまくしたてた。

 「県民に実感がわかない。適正な世論のためにも情報開示が必要だ」。ほかの保守系県議も加勢し、県は公表に踏み切った。

 栃木県のように道路以外の事業予算の執行留保を発表したのは全国で七府県。宮城県は養護老人ホームの改修補助など福祉・教育関連が多く含まれた。議会では自民党県議からも「やりすぎの感がある」との声が漏れるほどだった。

 道路事業以外は執行を留保しなかった兵庫県財政部局の職員が打ち明ける。「どこの都道府県でも歳入の中の暫定分は大きな比重ではない。道路以外への影響を抑えることは可能なはず。ただ、過去の借金がネックだ」

 バブル崩壊後の一九九〇年代、何度も行われた国の景気対策で各自治体は“身の丈以上”の道路整備事業を行い莫大(ばくだい)な借金を負った。

 公債を発行し借金、さらに一般財源をつぎ込んで道路を造る一方、借金返済にも道路財源の一部を充ててきた。だから暫定税率廃止で財源が減るのは困るというのが本音だ。

 財務省OBは「永久に廃止ならともかく、国や多くの自治体が直ちに予算の執行を留保したのは、住民への明らかな脅しだ」と言う。

 福祉や教育への“しわ寄せ”で住民の不安をあおりながら、なぜ多額の借金を抱えたかについては、どの自治体も説明がなかった。

 今月一日に暫定税率が復活し、各自治体の予算執行留保も次々に解除された。だが、復活を目指して不安をあおった“しっぺ返し”がこないとは限らない。

 「政治家や行政は、子どもの医療より道路が大事だと考えていることがよく分かった」

 宇都宮市で会った主婦はそうつぶやいた。

<国の予算凍結> 暫定税率が廃止された先月1日、国土交通省は本年度の一般道路事業予算4兆2051億円のうち、配分・執行額を12%の5006億円にとどめるといち早く発表した。1カ月の廃止で生じた国と地方の歳入の穴は、暫定分約2兆6000億円のうち7%の約1800億円。復活で国交省は残りの大部分も配分する。

 

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