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10年の軌道多摩都市モノレール

(3)多摩センター

2008年06月26日

写真

多摩都市モノレールの南端、多摩センター駅。周囲には集合住宅が立ち並ぶ=多摩市、本社ヘリから

 駅や商業施設に向かう立体歩道が伸びる多摩市の多摩センター駅前。平日は学生の姿が目立つ。しかし、人波の大半は、そのまま200メートルほど先の京王・小田急線の多摩センター駅に向かう。

 「遊ぶ場所があまりない感じ」。今春から多摩都市モノレールの沿線の大学に通う学生(18)は、まだ多摩ニュータウンの中核であるセンター地区で遊んだことがないという。同級生(18)の女性も傍らでうなずく。

 1日の平均乗降客数は約1万5千人(06年度)。沿線で2番目に多いが、高架式の駅の周囲は意外に閑散としている。若者たちは、単なる乗り換えターミナルとして「スルー」していくようだ。

 地元にとって、開業前のモノレールには期待と危機感の両方があったという。しかし、開通した半年後に「そごう」が閉店。人出が大きく落ち込み、モノレールの経済効果はあまり話題にならなかった。

 多摩センターに進出している企業などでつくる多摩センター地区連絡協議会の村上哲也事務局長は、「街に多摩川の北の人たちを呼び込むまでにはなっていない。メリットは限定的」と話す。ただ、商業地としての評価は高まっている、との見方もある。同市によれば、02年以前の5年間では処分の進まなかった駅周辺の土地が、その後の5年間で計約11.6ヘクタールも売却された。

 駅のすぐ東、現在駐車場になっている土地は、07年に売れた。購入した日本ビルド(本社・群馬県)では「3路線の交わる駅前に魅力を感じた」としており、地上6階地下2階建ての商業ビルを建設する予定だ。市経済観光課の中村元幸課長は「若者がとどまる場所になれば回遊につながる」と期待を寄せる。

 モノレールによる集客については、同協議会などが中心となり、2年前から具体的な取り組みを始めている。「ハロウィンパーティー列車」と呼ぶ貸し切り列車の運行だ。

 駅前で秋に開いているハロウィーンのイベントに合わせた企画。魔法使いなどに仮装した乗客を乗せ、立川北駅から多摩センター駅までを走る。多摩市民より、都心や県外の参加者が目立つという。

 駅周辺にあるサンリオの屋内型テーマパークとも連携した冬のイルミネーション、5月の子どもまつりなど、子育て世代を意識したイベントにも力を入れる。

 村上事務局長は「立川に商業集積が進んだ今、独自のまちづくりが必要。モノレールという環境に優しい乗り物と、緑にあふれ車歩分離の進んだ子育てしやすい街のイメージを重ね合わせ、多世代が共生する新しい『大人のまち』ができたら」という。

 多摩大経営情報学部の中庭光彦・客員准教授も、集客にはセンター地区全体の魅力アップが必要と話す。「モノレールだけに期待するのは間違い。ニュータウンで暮らす市民の文化的な活動が『仕事』を生み出すような工夫、例えばフリーマーケットや焼き物市などを開くような工夫が必要かもしれません」

  ◇

 モノレールの事故で最も怖いのはホームからの転落だ。高さ1.5メートルの軌道を支える床面までは約3メートル。高さ1.2メートルのホームドアがあっても「乗り越える酔っぱらいがいる」(池田英治駅務管理所長)から気を抜けない。以前、パスネットを落とした男性が転落。大けがをした。

 極め付きは高松駅で終電を逃した男性だ。幅約80センチの軌道上に下り、綱渡りのように立川北駅に向かって歩き出した。駅を離れれば地上高は十数メートル。落ちれば命がない。幸い保守点検用の工作車が見つけ、ことなきを得たという。

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