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【道路を問う】

第4部 「一般化」の裏で<上> 蜜月破たん恐れる業界 巨額交付金維持へ動き

2008年5月11日

各地で開かれたトラック協会の総決起大会では、暫定税率の一部引き下げなど政治に対する注文が相次いだ=昨年11月、浜松市で

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 「本当に悔しいのは長年応援し、政治献金をしてきた政党が、われわれの訴えを聞くどころか、(暫定税率維持という)反対の政策をとっていることだ」

 今年一月、福岡市のホールで開かれた福岡県トラック協会(ト協)の「経営危機突破総決起大会」。会員の運送会社社長が叫ぶようにあいさつすると、会場は大きな拍手で沸いた。

 直後に来賓として登壇した上部団体・全日本トラック協会(全ト協)の専務理事は「社長の後では非常にやりづらい」と発言。居並ぶ県ト協の幹部も渋い表情を見せた。

 燃料の軽油高騰に苦しむ社長らの切実な願いは、軽油一リットル当たり一七・一円を上乗せする暫定税率の全廃だ。だが長年、自民党を支持してきた全ト協の主張は、全廃ではなく、七・八円の一部引き下げにとどまっている。

 社長は後日、「県から補助金を受けているト協としては、暫定税率を全廃しろとは言えない」と話し、ト協への批判をにじませた。

 一九七六年、軽油引取税への暫定税率導入に猛反発したトラック業界に対し、「当面の激変緩和措置」として創設された運輸事業振興助成交付金。各都道府県のト協に対する毎年の交付額は、最近では百八十億円前後に上っている。暫定税率が全廃になれば、補助金の存在理由が完全になくなり、収入の大部分を交付金に依存する全ト協や都道府県ト協は存続が危うくなる。

 全ト協は「われわれは年間約五千億円の軽油引取税を(地方に)納め、公共輸送の重要な役割を担っている」と強調。「環境対策なども求められる今、仮に暫定税率引き下げでも交付金は必要」と受領の正当性を訴える。

 だが、巨額の交付金への疑問は各地で噴出している。

 愛媛県では三月、県の外部監査で「県ト協は非常に裕福。交付金の公益性をいうのは非常に疑問だ」と指摘された。同県ト協が積み立てた基金の残高は二〇〇六年度が約八億三千万円。監査を担当した公認会計士は「県ト協の財務資料をみる限り、交付金が県民のためになっているとは思えなかった」と話す。

 昨年は秋田県議会でも問題になり、複数の議員が「交付金の根拠は旧自治省の通達一枚だけ。使途がよく分からず、税金の垂れ流しだ」と批判した。

 さらに最近、交付金の一部がボウリング大会費(神奈川県ト協)や東京ディズニーランドの入場割引(東京都ト協)に充てられたことが明るみに出た。

 全国で百三十万台のトラックを擁する都道府県ト協は、自民党の強力支持団体として票と献金を提供する一方で、役人OBを受け入れ、業界利益の実現にまい進してきた。

 特にここ数年は、高速道路の料金値下げを国交省OB議員らと組んで活発に陳情。各地で夜間割引を中心に拡大してきた。国交省が昨年秋に策定した向こう十年間の道路中期計画にも初めて、割引策のために二兆円を盛り込んでいた。

 巨額の交付金を核として三十年以上も続いてきた政官業の蜜月。道路財源改革の裏で、蜜月維持に向けた動きも活発化している。 

    ◇

 一九五四年、まだ若手衆院議員だった田中角栄元首相が中心になって創設した道路特定財源。福田康夫内閣はそれを半世紀ぶりに一般財源化する方針を打ち出した。改革はどこまで実現するのか。「一般化」議論の深奥を探ってみた。

<軽油引取税> 地方税法に基づき、トラックやバスの燃料に課される都道府県税で道路特定財源の一つ。本則税率が1リットルあたり15円に対し、暫定税率は17・1円。昨年度の税収は全国で計1兆360億円に上った。

 

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