「荘子」(加島祥造訳) より
混沌王の死
混沌の中から天と地が分かれた
天の王様と大地の王様ができた
このふたりは、何でも速くやりたがる、せっかちな連中だった
天の王様はあわてて星をつくり
大地の王様は、せっかちに、地上にあれこれをつくった
ふたりは、時々、もとの住まいの「混沌」の王様を訪ねていった
混沌王は、天の王と大地の王を、
いつもやさしくもてなして、ごちそうしてくれた
あるとき、天の王と地の王は、
いつも混沌王にごちそうになってばかりいてすまない気がする
ひとつお礼に何かしようじゃないかと、話し合った
「そうだなあ、どうしてあげたらいいだろう」
「そういえば、人間は、七つの穴を持っている
目と鼻と耳と口だ それらを使ってエンジョイしている
ところが混沌王には、目も鼻も何もない
ひとつ、あの方にも穴を開けてあげようじゃないか
そうしたら、きっと喜ぶに違いないぞ」
それはいい考えだと言い合って、ふたりの王はさっそく取りかかった
最初の日に、まずひとつ、次の日にはもうひとつ・・
というふうに、七日かかって、穴を開けていった
人間と同じだけの穴を開け終わって
これできっと、喜んでいるに違いないと訪ねていった
混沌王は死んでいた
「老子」、「荘子」はたまに読み返すと落ち着きます。あの良寛様も「荘子」をよく読んでいたそうです。
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