■漫画家VS.原作者のバトル
青年漫画誌「イブニング」(講談社)に連載され映画化された人気漫画「軍鶏(しやも)」をめぐり、漫画家と原作者が著作権を争い、東京地裁で訴訟になっていることが27日、分かった。訴えた漫画家側は「ストーリーも人物設定もすべて自分が作り上げた」と主張している。漫画業界でこうした著作権トラブルは少なくないが、訴訟に発展するのは珍しいという。「軍鶏」は今年1月から休載が続いており、ファンの間では「謎の休載」と話題になっていた。
原告の漫画家、たなか亜希夫さんは原作者の橋本以蔵さんを相手取り、作品の著作権者がたなかさんであることの確認や単行本の著作権料約1億5000万円の支払いなどを求めている。27日開かれた第1回口頭弁論で、橋本さん側は争う姿勢を示した。
「軍鶏」は、優等生だった主人公が自分の両親を殺害後、少年院で空手を身につけ、格闘家らと戦うというストーリー。訴状によると、平成10年に「漫画アクション」(双葉社)で連載が始まり、16年からイブニングに移行。単行本は25巻で約530万部が発行され、今年5月に映画化された。
たなかさんは、「橋本さんは連載当初に大ざっぱなあらすじが書かれた原稿しか出しておらず、ストーリーやキャラクター設定、せりふなどすべて自分が行った」とし、「軍鶏は自分が単独で創作した作品」と主張している。
橋本さんは「弁護士に任せており、コメントできない」としている。
著作権に詳しい弁護士によると、漫画界で原作者と漫画家のこうしたトラブルは珍しくないが、訴訟にはならず、水面下で解決することが多いという。
訴訟で争ったケースとしては、人気少女漫画「キャンディ・キャンディ」が知られる。このケースでは原作者が絵に対する著作権があると訴え、最高裁は「漫画はストーリーに基づく二次的著作物」と認定し、原作者にも絵の著作権を認めている。
業界に詳しいコラムニストの夏目房之介氏は「漫画界には契約書を交わす慣習が少なく、原作者と漫画家の仕事の分担もあいまい。それでも著作権料は折半が多く、漫画家が怒るのも無理はないかも。しかし、漫画家はおとなしい人が多く、裁判沙汰(さた)になるというのはよほどのことだ」と話している。
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