政府が「骨太の方針2008」を決めた。社会保障の見直しや道路特定財源の一般化など政策課題は山積しているが、骨太はいずれも具体化を先送りした。福田康夫首相の指導力が問われている。
大田弘子経済財政担当相が記者会見で「(歳出圧力は)暴風雨のように強かった」と語ったように、ことしの骨太は例年になく、与党からの歳出拡大を求める強い圧力にさらされた。
その結果、まとまった骨太は、今後の「ばらまき予算」を懸念させるような文言があちこちにちりばめられている。
たとえば、財政政策について「経済情勢によっては、大胆かつ柔軟な政策運営を行う」と明言し、来年度予算も最大限の削減をうたう一方で「所要の対応」という言い方で抜け穴を示唆した。
二年前の骨太06は五年間で最大一四・三兆円の歳出削減を公約した。中でも社会保障費は計一・一兆円、来年度だけで二千二百億円の抑制を目指している。
一方で深刻化する医師不足への対応や少子化対策、後期高齢者医療制度の運用改善、救急医療体制の整備などが緊急課題として指摘され、骨太はこれらを「別枠」として取り扱う構えを示した。
たしかに、国民の安全・安心に直結する予算は確保すべきだ。同時に、それらが税金で賄われることを考えれば、予算の無駄と非効率を徹底して省くのも当然だ。
最近の「居酒屋タクシー」問題が象徴するように、無駄は必ず、潜んでいる。
社会保障にカネがいるなら、その分は公務員人件費や公共事業、防衛費など他の分野の予算を見直して、ねん出すべきである。
気になるのは、福田首相の顔がさっぱり見えない点だ。「生活者重視」を唱えているが、一体、何をどうしたいのか。道路特定財源でも、骨太は「生活者の目線で使い方を見直す」というだけで具体案は何も書いていない。
三カ月も前に財源を一般化する方針を表明しながら、このありさまでは年末の予算編成に向けて、与党内の予算分捕り合戦に拍車をかけるだけではないか。
暫定税率の扱いでも「環境税の取り扱いを含めて税制全般を見直す」と触れるにとどまった。
国民はじっと黙って政権の姿勢を見ている。声高な与党議員の圧力に屈して、ここで財政再建の旗を降ろしてはいけない。少し支持率が回復して、それに安心しているようでは、前途は厳しい。
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