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【主張】対北テロ指定解除 「拉致」進展へ制裁堅持を
米国が北朝鮮へのテロ支援国家指定解除の手続きに入ったことに伴い、ブッシュ大統領は「拉致を忘れない」と強調した。ライス国務長官も「北朝鮮を追及していく」と述べた。拉致問題が進展しないままの指定解除に反対してきた同盟国の日本に対する精いっぱいの配慮であろう。
日本政府は拉致問題が置き去りにされないよう、最大限の努力を尽くすべきだ。そのためには、北に対する経済制裁を堅持し、北が約束した「再調査」の具体的な中身を引き出す必要がある。
日朝国交正常化を重視するグループの中には、安倍前内閣の対北圧力重視策が拉致問題を膠着(こうちゃく)せたという見方がある。だが、万景峰号の入港禁止措置を含む経済制裁や朝鮮総連の関係団体に対する取り締まり強化は、確実に北のダメージとなってきた。それが今回の日朝協議で、北が「拉致問題は解決済み」としてきた従来の態度を変えた一因になっている。
再調査の具体的な中身は、拉致被害者の帰国につながるものでなければならない。検証不可能で結果が期待できないような調査方法の羅列では意味がない。再調査に期限を切り、その結果を見てから解除の是非を判断すべきことは、改めて言うまでもない。
米国で、対北テロ指定解除が発効するまでには45日間ある。日本は引き続き、拉致問題の進展がない場合の指定解除取り消しを粘り強く求めていくべきである。
日本の対米外交は、議会への働きかけが弱いのではないか。米議会を中心に、拉致は被害者が日本に帰国しない限り現在進行形のテロであり、指定解除は日米同盟にヒビを入れかねない問題だとの理解を深めていく必要がある。
福田康夫首相は、「指定解除は日朝交渉を進めるテコを失うことにならないか」との記者団の質問に「まったくそのようには考えていない」と答え、いつものように「日米の緊密な連絡」の必要性を繰り返した。首相は拉致問題解決の道筋をどう考えているのか。北の核申告前に、ブッシュ大統領と行った電話会談も含め、国民に分かるように説明すべきだ。
京都で開かれた主要8カ国(G8)外相会合では、拉致問題の早期解決を北に求める議長声明が出された。7日から始まる洞爺湖サミット(主要国首脳会議)でも、拉致問題解決への強いメッセージが出されることを期待する。