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社説2 諫早干拓の開門調査に応じよ(6/28)

 国営諫早湾干拓事業により有明海の環境が悪化し漁獲が減ったとして漁民らが起こした裁判で、佐賀地裁は事業の有用性に疑問符を付ける判決を出した。

 国は判決を受け入れて干拓地と海を仕切る「潮受け堤防」を開門し、海の環境や漁業に与えている影響を数年かけて調査すべきだ。

 裁判で争われた点は、堤防完成前後の各種データを比較・分析しなければ確かな結論は出せない。

 判決は「堤防閉め切り前のデータが不足」と述べ、事前の環境評価の不十分さをまず指摘。そのうえで、堤防完成前の状態に戻してデータを集める「中長期開門調査」を国が行わないのは、被害を立証しようとする漁民らを妨害するのも同然で「訴訟上の義務違反」と断じた。

 国がこの調査をしなかったのは工事続行を優先するためだった。判決は、反対派の声を無視して既成事実を積み重ねる公共事業の進め方を厳しく批判した格好だ。

 干拓事業は既に完成し、4月から約680ヘクタールに上る農地で本格的な営農が始まっている。開門すると農業生産や防災機能に支障をきたす恐れもあるが、判決は「漁民らが受けている権利侵害を救済する方が公共性、公益性が高い」旨、判断した。開門までに3年の猶予を与えている。国は誠実に対応すべきだろう。

 1997年に堤防が閉め切られて以降、赤潮の大規模化やアサリ、タイラギ漁などへの被害が再三指摘されてきた。2001年には第三者の専門家で構成する委員会が堤防を開き、調整池内に海水を入れた状態で影響を調べるように求めた。しかし農水省は02年に1カ月という短期の開門調査をしただけだった。

 一度着工すると見直しを拒み、国が果たすべき役割をおろそかにする点は、他の大規模公共事業にも通じる問題だ。例えば、国土交通省が建設を強行しようとしている淀川水系の四つのダム問題でも、有識者委員会が求める環境に配慮した代替案の検討を同省は拒んでいる。

 費用と効果の関係や環境面について関係者の疑問を解消することは国の責務である。今回の判決は公共事業に対する国のかたくなな姿勢への警鐘でもあると受け止めたい。

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