政府は2009年度の予算編成へ向けて、経済財政改革の基本姿勢を示す「骨太方針2008」を決めた。成長力の強化や国民本位の行財政改革など総論や看板には異論がないが、各論となると各省庁や政治家の要望を並べたところや、中身が薄いところが目立つ。骨太の名にふさわしい内容とは言い難い。
01年の小泉純一郎政権時代に始まった「骨太方針」の本来の狙いは首相の指導力発揮によって、改革の障害を乗り越えることだった。各省庁任せの政策決定では、省益や政治家の既得権益の壁に阻まれる。このため、民間の有識者を含めた経済財政諮問会議を「改革の司令塔」として活用、首相が後押しする仕組みをつくった。
小泉首相退陣後の07年の骨太方針からそうした性格は薄れてはいたが、今回はそれに拍車がかかったように見える。昨年夏の参院選敗北で自民党内から改革路線への反発が噴出したことが背景にある。福田首相も党内からの様々な圧力をはねのけられなかった。
もちろん、首相の指導力が見えないわけではない。民主党との政治対立の中で生まれたものとはいえ、揮発油税などの道路特定財源の一般財源化は1つの成果である。生活者・消費者が主役となる制度改革をうたっているのも「福田カラー」の表れだろう。
だが、改革の要になるようなところでは、腰が引けている。
例えば「国民本位の行財政改革」の柱と位置づけた地方分権改革。先にまとめた「推進要綱」に基づいて取り組むとしているが、その要綱の中身は、中央省庁などの抵抗で、地方分権改革推進委員会がまとめた第1次勧告よりも後退している。
最大限の歳出削減を行うとする基本方針はいいが、本当にそれを貫けるのか疑問だ。農山漁村や地域商業の活性化から必要な道路の着実な整備まで、様々な要望が骨太方針に盛り込まれているからだ。各省庁はこれでお墨付きを得たと判断し、道路財源などをあてに予算配分を迫ってくるのではないか。
消費税率上げを含む抜本的な税制改革の早期実現も盛り込んだが、福田首相自身が「2、3年とか長い単位で考えたい」と述べたことで、議論自体がしぼむ可能性もある。
骨太方針が指摘するように、将来を見据えて、社会保障改革や地方再生、開かれた経済システムづくりを進めることは急務である。それを文章やびほう策で終わらせないことこそ首相の使命である。