09年度政府予算編成の基本的指針である「経済財政改革の基本方針2008」(骨太の方針08)が27日、閣議決定された。
税制改革や社会保障制度改革の財源措置などには総論的に触れただけで、09年度予算がどのような姿になるのか見えてこない。
成長戦略にかかわる具体策は細部まで言及している。ところが、肝心の予算となると骨格は抽象的にしか示されていない。「骨細」「骨なし」といわれても仕方がない。
骨太の方針が何をおいてもやらなければならないのは、予算編成で焦点となる分野で概算要求基準や概算要求の基本的な目安を提示することだ。増減税では具体的な税目やその幅のめどは示す必要がある。
政府が09年度から実施することを約束している基礎年金の国庫負担引き上げでは、2兆3000億円の財源が必要だ。骨太の方針は04年度の法改正に基づき、「所要の安定的な財源を確保する税制の抜本改正を行った上で、引き上げる」と明記しているだけだ。
ここで重要なことは、安定的財源措置だ。単年度や数年度ではなく、国民の安心を確保する以上、向こう10年程度は耐えられる仕組みでなければならない。消費税がその最有力候補だ。
ところが、福田康夫首相の消費税率引き上げを巡る発言は迷走している。早期の決断をにおわせたかと思えば、「2、3年の長い単位で考えた」と軌道修正し、さらには、「あまりヒートアップしないほうがいい」と議論の鎮静を図ろうとした。与党も野党も消費税では思考停止状態だ。これで、安定的な財源を巡る議論をどうやって行うのか。
無駄ゼロの取り組みや、税収増で必要な財源が調達できるのであればそれも許されるが、現実は厳しい。景気の後退期入りも近い中、税収の伸びはあまり期待できない。無駄を削ることで数兆円規模の財源を生み出せるとは思われない。
道路特定財源の一般財源化でも、道路以外に振り向ける程度を示すことはできなかった。総選挙モードの与党からは、歳出圧力が例年になく高まっている。道路整備計画を大幅に圧縮できる保証はないが、せっかくの一般財源化だから旗は高く掲げるべきなのだ。
11年度に国と地方を合わせた財政の基礎的収支黒字化を達成する歳出・歳入一体改革では、もともと、歳入増対策が想定されていた。社会サービスを安定的に維持していくためには、負担の問題も避けることはできないからだ。景気が不透明になるとともに、このことが重要になっている。
一方で、自民党や関係省庁からの要望は数多く盛り込まれた。これで、国民が安心を実感できる予算になるのか。福田首相や経済財政諮問会議の見識が問われる。財政健全化への志はどこへ行った。
毎日新聞 2008年6月28日 東京朝刊