今週のお役立ち情報
【最新ハイテク講座】航空機からガンダムまで!「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」
1903年、ライト兄弟が人類初の飛行に成功して以来、航空技術は飛躍的な進歩を遂げてきた。今や旅客機は船に代わる交通機関として定着し、人類はその到達先を宇宙にまで広げようとしている。こうした飛行を実現しているのが「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」だ。
「ジェットエンジン」は旅客機や戦闘機などに利用され、「ロケットエンジン」は宇宙ロケットやスペースシャトルなどに搭載されている。名前を聞いたことはあっても、それぞれのエンジンがどのような特徴を持ち、どのような仕組みで動いているかを説明できる人は少ないだろう。
そこで今回は、最先端の航空技術を支える「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」の仕組みについてみてみよう。
■ジェットエンジンの技術
旅客機や戦闘機のエンジンとして使用されているジェットエンジンは、どのようにして生まれたのだろうか。またどういう仕組みで動くのだろうか。ジェットエンジンの歴史とそれを支える技術をまとめてみた。
●ジェットエンジンとその歴史
ジェットエンジンとは、文字通りに「ジェット(噴流)」の力を生み出すエンジンのことだ。
第二次世界大戦の頃までは、航空機は「レシプロエンジン」と呼ばれる燃料を燃焼させたエネルギーを利用してプロペラをまわすエンジンを使用していた。レシプロエンジンは、もっとも一般的な自動車用エンジンと基本原理は同じだ。
レシプロエンジンは優れたエンジンであったが出せる出力に限界が見え始めていた。より高速で上昇性能に優れた飛行機を作り上げるために開発されたエンジンこそが「ジェットエンジン」だった。
世界で初めてジェットエンジンを搭載した航空機は1910年、ルーマニアで開発された「コアンダ=1910」とされている。ただしコアンダ=1910は、純粋なジェット推進ではなくレシプロエンジンの駆動力で空気を送り込んでいた。
ジェットエンジンだけを搭載した航空機はドイツのハインケル社が開発した「He 178」だが、1939年の初飛行では、飛行性能は当時のレシプロエンジンを搭載した航空機よりも劣っていたようだ。
●ジェットエンジンの仕組み
レシプロエンジンは自動車のエンジンと基本は同じで、吸気・圧縮・燃焼・排気の行程を間欠的に行っている。これに対し、ジェットエンジンでは、これらの工程を連続して実行できる。もう少し詳しく説明しよう。
ジェットエンジンは、吸入口から空気を取り込んで(吸気)、コンプレッサー(圧縮機)によって大気圧の数十倍まで空気を圧縮する(圧縮)。圧縮された空気は「燃焼室」と呼ばれる部屋で燃料と混合されてから燃焼され、高温・高圧の燃焼ガスとなる(燃焼)。燃焼ガスは、タービンを回転させエンジンから排出される(排気)。
このときのタービンの回転は、圧縮機に伝わっており、連続的に空気を吸入・圧縮させるための動力となる。燃焼ガスは、そのまま推力と利用したり、軸出力(エンジン出力)を得る追加のタービンを回転させるために使用される。
・ジェットエンジンの動作原理(イラスト) - ウィキペディア
■ロケットエンジンとそれを支える技術
スペースシャトルや宇宙ステーション 実験棟「きぼう」の打ち上げなどにも欠かせないロケットエンジンは、どのような仕組みなのだろうか。ジェットエンジンとの違いとともにみてみよう。
●ロケットエンジンとは?
ロケットエンジンとは、推進剤を噴射し、その反動で推力を得るエンジン。推進剤はロケットエンジンが噴射するために必要なエネルギーを生成する物質だ。
●ジェットエンジンとの違いは?
海外では、ロケットエンジンは、ジェット(噴流)の反作用で推力を得るという意味で、ジェットエンジンの一種として扱われているが、国内では酸化剤の違いで両者を明確に分けている場合が多い。
ジェットエンジンは、外部から酸化剤となる空気を取り入れる必要があるため空気がない宇宙空間では使用できない。それに対してロケットエンジンはあらかじめ酸化剤を搭載しているので宇宙空間でも問題なく使用できる利点がある。
●ロケットエンジンの種類と特徴
ロケットは、使用するエネルギーの違いから化学ロケット・電気ロケット・原子力ロケットの3種類に大別できる。
化学ロケットは、燃料を燃焼した際に生じる熱エネルギーを利用するもので、実用化されたロケットの大半は化学ロケットだ。ほかの種類のロケットに比べて効率は悪いが、短時間に大きな推力を発生させることができる。
電気ロケットは、推進剤を電気的に加速して噴射するロケット。人工衛星や宇宙探査機などのスラスターとして使用されいる。大きい推力を得るのは難しいが長時間使用できる。
原子力ロケットは、推進剤を原子炉で加熱して噴射するロケット。ロケットの後方で核爆弾を爆発させて推進力を得るものなどもある。安全性の問題があるうえ、核兵器の宇宙空間への持ちこみを禁じた「宇宙条約」および宇宙空間での核爆発を禁止する「部分的核実験禁止条約」の制限により、実用化が難しいとされている。
●ロケットエンジンの仕組み
もっとも一般的なロケットエンジンである化学ロケットを例に、ロケットの仕組みを説明しよう。
化学ロケットは燃料と酸化剤を搭載し、これらを燃焼させて高温・高圧のガスを噴射する。この噴射のエネルギーをそのまま推進力として利用している訳だ。
・ロケットエンジンの動作原理(イラスト) - ウィキペディア
●化学ロケットの種類と特徴
化学ロケットは、推進剤の形態の違いで、固体燃料ロケット・液体燃料ロケット・ハイブリッドロケットの3種類に大別できる。
まず固体燃料ロケットは、常温で固体の燃料と酸化剤またはその混合物を使用するロケットだ。構造は単純だが、保管がしやすく、安価で大きな推力が得られる。欠点は推力の制御が難しいことで、いったん化学反応が生きると、燃料をすべて消費するまで停止させるのは難しい。
液体燃料ロケットは、液体の燃料と酸化剤を使用するロケット。推力の制御が容易で、いったん燃焼を停止させてもそのまま再度点火することができる。欠点は燃料を送り出すための高圧ポンプや配管システムが必要とされる点で、ロケットの構造が複雑になるぶん、固体燃料ロケットに比べて高価になる。
ハイブリッドロケットは、固体燃料ロケットと液体燃料ロケットをあわせたロケットだ。燃料と酸化剤がそれぞれ異なる相をもち、通常は固体の燃料と液体の酸化剤が用いられる。構造が簡易で推力を調整しやすいが、こちらのロケットも固体燃料ロケットに比べてコストがかかる。
●ガンダムの世界に一歩近づいた
「機動戦士ガンダム」が好きな人の中には、「熱核ロケット」という言葉を聞いたことがあるだろう。ガンダムの世界では、熱核ロケットは人間が操縦するロボットの推進エンジンとして使用されている。
熱核ロケットとは、原子力ロケットのひとつで、原子力潜水艦などに搭載されている小型原子炉が放出する熱エネルギーによって水素などの推進剤を加熱し、ノズルから放出する。NASAでは、有人火星渡航などを目的とした宇宙船のエンジンとして、この熱核ロケットを現在研究中だ。
機動戦士ガンダムの世界にあったハイテク技術が実現される日も、そう遠い未来の話ではなさそうだ。
参考:
・ジェットエンジン | ロケットエンジン | 原子力推進 | ロケットエンジンの推進剤 - ウィキペディア
・ガンダムにも搭載予定? NASAが研究開発中の熱核ロケットエンジン - Technobahn
・未来のロケットの種類 - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
・宇宙航空研究開発機構(JAXA) - 研究機関
■こちらもオススメ!最新ハイテク講座 最新ニュース
・未来を大予言!気象や天災を予測するハイテク技術
・悪者じゃない!Winnyやメッセで使われてる「P2P」は優れた技術
・サイクロンからロボットまで!ハイテク掃除機の最新事情
・レーザーマウスから指マウスまで!ハイテクマウスの最新事情
・もはや「ICカード」時代!急速に生活に入り込んだICカードのハイテク度
・【最新ハイテク講座】記事バックナンバー
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「ジェットエンジン」は旅客機や戦闘機などに利用され、「ロケットエンジン」は宇宙ロケットやスペースシャトルなどに搭載されている。名前を聞いたことはあっても、それぞれのエンジンがどのような特徴を持ち、どのような仕組みで動いているかを説明できる人は少ないだろう。
そこで今回は、最先端の航空技術を支える「ジェットエンジン」と「ロケットエンジン」の仕組みについてみてみよう。
■ジェットエンジンの技術
旅客機や戦闘機のエンジンとして使用されているジェットエンジンは、どのようにして生まれたのだろうか。またどういう仕組みで動くのだろうか。ジェットエンジンの歴史とそれを支える技術をまとめてみた。
●ジェットエンジンとその歴史
ジェットエンジンとは、文字通りに「ジェット(噴流)」の力を生み出すエンジンのことだ。
第二次世界大戦の頃までは、航空機は「レシプロエンジン」と呼ばれる燃料を燃焼させたエネルギーを利用してプロペラをまわすエンジンを使用していた。レシプロエンジンは、もっとも一般的な自動車用エンジンと基本原理は同じだ。
レシプロエンジンは優れたエンジンであったが出せる出力に限界が見え始めていた。より高速で上昇性能に優れた飛行機を作り上げるために開発されたエンジンこそが「ジェットエンジン」だった。
世界で初めてジェットエンジンを搭載した航空機は1910年、ルーマニアで開発された「コアンダ=1910」とされている。ただしコアンダ=1910は、純粋なジェット推進ではなくレシプロエンジンの駆動力で空気を送り込んでいた。
ジェットエンジンだけを搭載した航空機はドイツのハインケル社が開発した「He 178」だが、1939年の初飛行では、飛行性能は当時のレシプロエンジンを搭載した航空機よりも劣っていたようだ。
●ジェットエンジンの仕組み
レシプロエンジンは自動車のエンジンと基本は同じで、吸気・圧縮・燃焼・排気の行程を間欠的に行っている。これに対し、ジェットエンジンでは、これらの工程を連続して実行できる。もう少し詳しく説明しよう。
ジェットエンジンは、吸入口から空気を取り込んで(吸気)、コンプレッサー(圧縮機)によって大気圧の数十倍まで空気を圧縮する(圧縮)。圧縮された空気は「燃焼室」と呼ばれる部屋で燃料と混合されてから燃焼され、高温・高圧の燃焼ガスとなる(燃焼)。燃焼ガスは、タービンを回転させエンジンから排出される(排気)。
このときのタービンの回転は、圧縮機に伝わっており、連続的に空気を吸入・圧縮させるための動力となる。燃焼ガスは、そのまま推力と利用したり、軸出力(エンジン出力)を得る追加のタービンを回転させるために使用される。
・ジェットエンジンの動作原理(イラスト) - ウィキペディア
■ロケットエンジンとそれを支える技術
スペースシャトルや宇宙ステーション 実験棟「きぼう」の打ち上げなどにも欠かせないロケットエンジンは、どのような仕組みなのだろうか。ジェットエンジンとの違いとともにみてみよう。
●ロケットエンジンとは?
ロケットエンジンとは、推進剤を噴射し、その反動で推力を得るエンジン。推進剤はロケットエンジンが噴射するために必要なエネルギーを生成する物質だ。
●ジェットエンジンとの違いは?
海外では、ロケットエンジンは、ジェット(噴流)の反作用で推力を得るという意味で、ジェットエンジンの一種として扱われているが、国内では酸化剤の違いで両者を明確に分けている場合が多い。
ジェットエンジンは、外部から酸化剤となる空気を取り入れる必要があるため空気がない宇宙空間では使用できない。それに対してロケットエンジンはあらかじめ酸化剤を搭載しているので宇宙空間でも問題なく使用できる利点がある。
●ロケットエンジンの種類と特徴
ロケットは、使用するエネルギーの違いから化学ロケット・電気ロケット・原子力ロケットの3種類に大別できる。
化学ロケットは、燃料を燃焼した際に生じる熱エネルギーを利用するもので、実用化されたロケットの大半は化学ロケットだ。ほかの種類のロケットに比べて効率は悪いが、短時間に大きな推力を発生させることができる。
電気ロケットは、推進剤を電気的に加速して噴射するロケット。人工衛星や宇宙探査機などのスラスターとして使用されいる。大きい推力を得るのは難しいが長時間使用できる。
原子力ロケットは、推進剤を原子炉で加熱して噴射するロケット。ロケットの後方で核爆弾を爆発させて推進力を得るものなどもある。安全性の問題があるうえ、核兵器の宇宙空間への持ちこみを禁じた「宇宙条約」および宇宙空間での核爆発を禁止する「部分的核実験禁止条約」の制限により、実用化が難しいとされている。
●ロケットエンジンの仕組み
もっとも一般的なロケットエンジンである化学ロケットを例に、ロケットの仕組みを説明しよう。
化学ロケットは燃料と酸化剤を搭載し、これらを燃焼させて高温・高圧のガスを噴射する。この噴射のエネルギーをそのまま推進力として利用している訳だ。
・ロケットエンジンの動作原理(イラスト) - ウィキペディア
●化学ロケットの種類と特徴
化学ロケットは、推進剤の形態の違いで、固体燃料ロケット・液体燃料ロケット・ハイブリッドロケットの3種類に大別できる。
まず固体燃料ロケットは、常温で固体の燃料と酸化剤またはその混合物を使用するロケットだ。構造は単純だが、保管がしやすく、安価で大きな推力が得られる。欠点は推力の制御が難しいことで、いったん化学反応が生きると、燃料をすべて消費するまで停止させるのは難しい。
液体燃料ロケットは、液体の燃料と酸化剤を使用するロケット。推力の制御が容易で、いったん燃焼を停止させてもそのまま再度点火することができる。欠点は燃料を送り出すための高圧ポンプや配管システムが必要とされる点で、ロケットの構造が複雑になるぶん、固体燃料ロケットに比べて高価になる。
ハイブリッドロケットは、固体燃料ロケットと液体燃料ロケットをあわせたロケットだ。燃料と酸化剤がそれぞれ異なる相をもち、通常は固体の燃料と液体の酸化剤が用いられる。構造が簡易で推力を調整しやすいが、こちらのロケットも固体燃料ロケットに比べてコストがかかる。
●ガンダムの世界に一歩近づいた
「機動戦士ガンダム」が好きな人の中には、「熱核ロケット」という言葉を聞いたことがあるだろう。ガンダムの世界では、熱核ロケットは人間が操縦するロボットの推進エンジンとして使用されている。
熱核ロケットとは、原子力ロケットのひとつで、原子力潜水艦などに搭載されている小型原子炉が放出する熱エネルギーによって水素などの推進剤を加熱し、ノズルから放出する。NASAでは、有人火星渡航などを目的とした宇宙船のエンジンとして、この熱核ロケットを現在研究中だ。
機動戦士ガンダムの世界にあったハイテク技術が実現される日も、そう遠い未来の話ではなさそうだ。
参考:
・ジェットエンジン | ロケットエンジン | 原子力推進 | ロケットエンジンの推進剤 - ウィキペディア
・ガンダムにも搭載予定? NASAが研究開発中の熱核ロケットエンジン - Technobahn
・未来のロケットの種類 - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
・宇宙航空研究開発機構(JAXA) - 研究機関
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