米国:「北朝鮮テロ指定」解除…6カ国協議再開へ

北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を議会に通告すると表明するブッシュ米大統領=ロイター
北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を議会に通告すると表明するブッシュ米大統領=ロイター
テロ支援国家指定解除を巡る今後の流れ
テロ支援国家指定解除を巡る今後の流れ

 ブッシュ米大統領は26日、ホワイトハウスで記者会見し、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除を決定したと表明し、議会に通告した。対敵国通商法の適用除外手続きも行った。北朝鮮が26日、6カ国協議の合意に基づき、核計画の申告書を議長国・中国へ提出したことを受け、見返り措置として決めた。北朝鮮が「敵視政策の象徴」と見なしたテロ支援国家指定の解除に米国が動いたことで、北朝鮮の核問題と米朝関係は新たな局面に入った。指定解除に慎重に対処するよう主張してきた日本は拉致問題解決に向け、厳しい対応を迫られそうだ。

 中国は6カ国協議の首席代表会合を7月1日ごろから5日間程度、北京で開く方向で調整に入った。申告内容の検討とともに、非核化への第3段階措置として検証方法も話し合う。日朝協議は別途再開を模索しそうだ。

 指定解除は通告翌日から「45日後」に発効する。実現すれば、20年ぶりの解除となる。

 大統領は会見で、北朝鮮の核申告は「正しい方向への第一歩」と述べる一方、「北朝鮮が国際社会の懸念に適切に対処しなければ、相応の結末が待っている」と北朝鮮をけん制した。さらに日本人拉致事件について「絶対に忘れない。日本と協力し、北朝鮮に圧力をかける」と語り、日本への配慮を示した。

 申告書の提出は北朝鮮の崔鎮洙(チェジンス)駐中国大使が中国外務省を訪れ、行った。外交関係者によると申告書は約60ページ。過去に抽出したプルトニウムは37キロ前後とされる。(1)プルトニウムの使用目的(2)核関連施設のリスト(3)天然ウランの在庫量--も記載されている。核兵器数は含まれていない。

 北朝鮮が否定する高濃縮ウランによる核開発、シリアの核開発への協力などは非公開の別の文書に盛り込まれる。

 昨年2月の6カ国協議で第2段階措置に位置付けた「完全かつ正確な核申告」は同年末までに完了する約束からすでに半年遅れたうえ、合意からほど遠い内容となった。

 一方、今後も米国の対北朝鮮制裁措置の多くが残る。ミサイルや核技術の拡散、人権侵害、06年の核実験などに伴うもので、武器の禁輸、米金融機関の信用供与禁止、資産凍結など数十項目に上る。

 核の申告と並び第2段階措置の柱である「核施設の無能力化」は全11工程のうち、8工程が終了。大統領は解除発効までの45日間で、6カ国協議の枠組みで申告内容を「厳格に検証できる」システムを構築する姿勢も示した。【小松健一、ワシントン及川正也、ソウル堀山明子】

 ◇ことば…テロ支援国家

 米国務長官が国際テロ年次報告書で指定した国々を一般的にそう呼ぶ。最新の07年版ではキューバ、イラン、北朝鮮、スーダン、シリアの5カ国を指定。北朝鮮は88年から継続指定されている。

 北朝鮮は、87年11月に北朝鮮工作員による大韓航空機爆破事件が起きたことを受けて指定された。07年年次報告書は、北朝鮮について「大韓機事件以後は、テロ支援は見られない」としながらも(1)日航機「よど号」ハイジャック事件(70年)の実行犯をかくまっている(2)日本人拉致事件について日本政府が明確な説明を求めている--の2点を指摘している。

 指定条件は、(1)テロリストを国内にかくまったり、本拠地設置を認めるなど、国際的テロ組織を支援している(2)テロ組織に資金や武器の援助を続けている(3)テロ組織要員に訓練を実施している--ことなど。

 米政府は指定国に対し、武器関連の輸出・売却禁止▽軍民両用品目の輸出管理強化▽経済援助の禁止(人道支援は除く)▽金融規制--の4種の制裁措置を取っている。

 ◇ことば…対敵国通商法

 米国が北朝鮮に科している経済制裁の根拠法の一つで1917年制定。戦時における敵対国との外国為替取引や輸出入などを規制する権限を大統領に与えている。米国は50年6月の朝鮮戦争ぼっ発直後、北朝鮮を国家安全保障上の脅威と認定して同法に基づく禁輸措置を導入、現在も継続している。適用解除は大統領権限で議会の承認は不要。

毎日新聞 2008年6月26日 21時24分(最終更新 6月27日 2時30分)

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