北朝鮮は26日、6者協議の合意で義務づけられていた「核計画の申告」を議長国・中国に提出した。核兵器の詳細な情報などは含まれていない模様だが、米政府は同日、ブッシュ大統領が、北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を議会に通告したと発表した。停滞していた6者協議は近く動き出す見通しだ。
中国外務省が26日、申告を確認した。期限とされた昨年末から半年近く遅れた。韓国政府当局者によると、申告は約60ページで、主な内容は(1)核施設の目録(2)プルトニウムの生産量と抽出量、その使用先(3)ウランの在庫量など。中国はまだ各国に配布していない。
米政府高官によると、米朝は4月の協議で、高濃縮ウラン(HEU)による核計画やシリアなどへの核技術協力問題は米朝間の非公開議事録で扱うことで合意し、2ページほどの議事録はすでに中国に手渡されているという。北朝鮮が「米国の懸念を認識し、相互に満足できる解決に向けて協力する」との内容とされる。
申告の核心とされるプルトニウムの総量は30〜50キロとの推測があったが、関係筋によると、申告で38キロ前後と初めて明示した可能性がある。核兵器に関する情報について韓国政府当局者は、核兵器への使用量を記している可能性を示唆しつつ、「核兵器数など詳細は含まれていないと承知している」と述べた。
ブッシュ氏はホワイトハウスからテレビ中継で声明を読み上げ、「我々は北朝鮮の核廃絶という目標に向けて一歩近づいた」と述べた。ただ、北朝鮮が約束を守らなければ「我々はさらに制限を加える」と警告した。ブッシュ氏は同時に、対敵国通商法の対北朝鮮制裁条項を解除するとの大統領布告を出した。
HEUの問題が別扱いとなるなど、6者協議で合意した「完全かつ正確な申告」にはほど遠いが、来年1月に任期切れを迎えるブッシュ政権は実績作りを優先させ、指定解除へかじをきった。
ブッシュ氏は、テロ支援国家指定の解除決定は「『行動対行動』という6者協議の原則に立ち、合意に基づくものだ」と説明、「北朝鮮の金融や外交面での孤立を大きく変えるものではない」と、全面的な制裁解除ではないことを強調した。
米政府は当面、申告に対する検証体制の確立を目指す。テロ支援国家指定の正式解除は議会通告から45日後以降で、米政府はこの間の北朝鮮の対応次第で解除するかどうか最終的に判断するとしている。ただ、解除手続きを停止すれば北朝鮮が反発し、6者協議が行き詰まるのは必至。米議会内には反対も残るが、ブッシュ政権は非核化の進展を最優先し、そのまま解除に動く可能性が高い。
北朝鮮は非核化に取り組む姿勢を示すため、核施設が集中する寧辺で27日、すでに無能力化された冷却塔を爆破する。世界5カ国の放送局が中継する予定という。(鵜飼啓、ソウル=箱田哲也、ワシントン=梅原季哉)