9月1日から2日にかけて開かれた六ヶ国協議の米朝作業部会で、北朝鮮が核施設の無能力化と核計画の申告を年内に実行することで合意した。アメリカは北朝鮮にたいして「政治、経済的保障措置」を取ることを確認した。
核施設の無能力化と核計画の申告、と北朝鮮側の措置については具体的なのに、アメリカの措置は曖昧にしか発表されていないのはやや不自然だ。二月の合意では、アメリカが初期段階で取る措置はテロ支援国家指定の解除と対敵通商法の適用終了だった。「政治、経済的保障措置」とされているのは常識的に考えればこの二つだ。北朝鮮側の公式メディアもアメリカがこの二つの措置を決めたと報じた。しかしアメリカ国務省はその報道をわざわざ否定した。日本がテロ支援国家指定の解除に反対していることに配慮したのだろうか。
数日後の日朝作業部会は大方の予想通り何の合意もなく終わった。しかしよど号グループの問題について北朝鮮側が「よど号犯と日本政府が協議する問題。そのための場所を用意する準備がある」という姿勢を示したことは今後につながりそうだ。よど号グループはもともとハイジャックで勝手に北朝鮮に飛び込んだにすぎない。北朝鮮側にとって最も切り捨てやすい「カード」だ。北朝鮮側が中立的な第三者の立場を取って実質的によど号グループを日本側に引き渡し、日本側がそれを拉致問題の進展と見なして経済制裁を解除する可能性はある。そうなればアメリカも気兼ねなくテロ支援国家指定の解除を発表できる。
そんな筋書きが見えたところで、9月7日にブッシュがさらに踏み込んだ発言を行ったことが伝えられた。「北朝鮮が検証可能な非核化措置を誠実に履行した場合、韓国戦争(1950-1953)を終結させる平和協定を金正日(キム・ジョンイル)北朝鮮国防委員長と共同署名する用意がある」というメッセージを金正日に伝えるよう、盧武鉉に頼んだというのだ。韓国政府の官僚が明かしたものだが、事実だとすれば米朝首脳会談の提案である。ブッシュが自らの言葉で同じことを語れば状況は大きく変わるだろう。
しかし、これはかつて見た光景だ。クリントン政権の北朝鮮政策は米朝枠組み合意で始まり、オルブライト国務長官の訪朝で終わった。それを受けたブッシュ政権の北朝鮮政策はAnything But Clinton、つまりクリントンの政策の否定で始まった。枠組み合意は否定され、建設中の軽水炉は鉄クズと化した。ところが、任期の終わりが近づくにしたがってブッシュ政権の政策はますますクリントン政権の政策と変わらなくなってきた。クリントン政権と同様、ブッシュ政権も何の成果もなく終わるのは間違いない。現在の対話路線は明確な構想に基づくものではなく、ネオコン路線が破綻した結果にすぎない。
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