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研究目的
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過去2億年にわたり、地球表層環境は寒冷化してきました。この長期的な寒冷化は、様々な時間スケールの周期的な気候変動が複雑に重なりあって生じてきたことが、主に深海底掘削試料の研究により明らかになってきました。そのような気候変動の要因は、究極的には隕石衝突や地球軌道要素の変化のような地球外部要因と、地殻やマントル中の様々な元素の分布と循環速度の変動のような地球内部要因の2つに分けられます。これらの要因の関わりから過去2億年の地球の歴史を復元し、地球の進化のメカニズムを明らかにしようとしています。そして、気候変動において重要な役割を果たしている地球表層の物質循環の理解を目指し、研究を行っています。
黒色頁岩の形成メカニズムの研究
- 白亜紀(1億4500万年前〜6500万年前)は、大気中のCO2が現在の数倍もあり、極域に氷床がない、非常に温暖な時期(温室地球)であったと考えられています。白亜紀の地層には、白い炭酸塩堆積物の中に、「黒色頁岩」と呼ばれる有機物に非常に富んだ黒い地層が何層かあることが知られています。黒色頁岩が堆積したイベントは「海洋無酸素事変(OAE: Oceanic Anoxic Event)」と呼ばれていますが、その形成メカニズムは未だわかっていません。私たちは、イタリア・フランスで採取された黒色頁岩を使って、様々な分析方法を駆使して研究を進めています。
図1 イタリア北部の黒色頁岩(Black Shale)層
生物が関与した酸化還元境界での物質循環の研究
- 白亜紀の黒色頁岩の研究の際、当時と類似した現在の環境の研究から当時の環境を推定する手法も用いています。そのような場所として鹿児島県上甑島の貝池を選び、集中的に研究をしています。貝池では酸化還元境界が水深5mにあり、以深では遊離酸素がなく、硫化水素が定常的に存在する還元的な環境です。境界では、紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌などの非酸素発生型の光合成細菌が高密度で生息しています。湖底では、緑色硫黄細菌とシアノバクテリアがマットを形成し特殊な生態系を形成しています。私たちは、貝池の水と堆積物に的を絞り、微生物学的・堆積学的・有機/無機/安定同位体地球化学的アプローチ等の様々な手法により研究を進め、OAEの海洋プロセスの理解を目指しています。
図2 鹿児島県上甑島・貝池の模式的な断面図
第四紀氷室地球の研究
- 第四紀(200万年前〜現在)は、46億年にもわたる地球史の中で大気中のCO2濃度が最も低く、極域に氷床が発達する氷室地球です。第四紀では、主として2-10万年周期の気候変動に伴って氷期・間氷期が周期的に繰り返し、これに数10-1000年で起こる急激な気候変動が重なりあっています。私たちは、この急激な気候変動に焦点をあて、将来起こりうる地球温暖化に敏感な高緯度海域の堆積物を採取・解析し、第四紀氷室地球の研究を行っています。
図3 氷室地球における気候変動の例
オホーツク海氷の拡大に伴って海氷が運搬した漂流岩屑の量が、数百〜数千年周期のパルスを示している。
海陸境界付近の堆積プロセスの研究
- 海洋と大陸の境界付近では堆積速度が大きく(数m/1000年)、過去の環境変動を高解像度で記録しています。そこでは大量の有機物が沈澱して、究極的には石油・ガスなどのエネルギー資源に変わり、地球表層から炭素を除去する重要な場となっています。私たちは、海陸境界付近の炭素循環を理解するため、相模湾中央部(水深1450m)の詳細な定点観測・静岡の相良油田掘削・房総半島や銚子に露出する高堆積速度堆積岩の研究などを行っています。