裁判所・部 水戸地方裁判所土浦支部・合議係
事件番号 平成17年(わ)第218号
事件名 殺人
被告名 飯嶋勝
担当判事 彦坂孝孔(裁判長)
日付 2006.2.24 内容 証人尋問

 この事件の審理が行われた土浦支部の1号法廷は、どこか薄汚れた印象のある、寂れた印象を与える内装だった。尤も、この日が曇りだったためにそのように感じたのかもしれない。
 傍聴席は44席あり、遺族席、記者席共に指定されていなかった。
 初老の傍聴人数名が、開廷前に、事件に関する話をしていた。傍聴人は、私を除いて十数名いた。
 検察官は、小太りで眼鏡をかけた30代ぐらいの男性。
 弁護人は、まずは黒いスーツ姿の3,40代ぐらいの男性が入廷する。その弁護人は、開廷前に、被告人に何か話しかけていた。やや遅れて、眼鏡をかけた30代ぐらいの男性弁護人一名と、眼鏡をかけていない30代ぐらいの男性弁護人2名が入廷する。
 被告人は、痩せた、色白の、髪を短く刈った男だった。目はやや細い。眼鏡をかけていて、口元に無精髭が生えている。不健康な印象を与え、年よりやや老けて見える。上下とも緑がかった服を着ていた。入廷時には、不安そうな、睨んでいるようにも見える目つきで傍聴席を見た。開廷前は、弁護人と少し話した以外は俯いていた。
 2時からの予定だったが、裁判長達がそれより五分過ぎても入廷せず、書記官が法廷内の電話でどこかに連絡を入れる。弁護人の到着を告げたのかもしれない。
 裁判長達が入廷し、法廷内の人間は起立し、礼を行う。その時、被告人は、ゆっくりした動作で、腰を曲げて立ち上がった。
 裁判長は、髪をオールバックにした初老の男性。裁判官は、30代ぐらいの男性二名。
 被告人は、裁判長に促され、ゆっくりとした動作で、証言台に座る。背を丸めていた。
 本日は裁判所の構成が変わったため、先ずは更新手続きが行われる。

裁判長「飯嶋勝ですね?」
被告人「は・・・・・はい」
裁判長「生年月日は、昭和51年8月2日?」
被告人「はい」
裁判長「職業、住所等に変更は無い?」
被告人「・・・・・はい」
裁判長「被告人の答弁は、状況に一部違いはあるが、三人を殺害したのは間違いないということでいいですか?」
被告人「・・・・・・も・・・もう一回」
裁判長「起訴状について、一部違うが、三人を殺害したのは間違いないですか?」
被告人「・・・・・はい」

 この日は、前回に引き続き、被告人質問が行われる。先ず被告人質問を行ったのは、最初に入廷した、優しそうな話し方をする、イデ弁護人だった。
 被告人質問に答える被告人の声は、小声で、弱弱しい、裏返っているようにも聞こえる、子供っぽい声だった。しかし、その声は抑揚に乏しく、感情が表れていない。また、被告人質問に答える時以外は、背を丸めて下を向くか、机の上の物を見ていた。質問に答える時は体を少し起こし、背も少し伸ばして答えたが、決して弁護人の方を見ようとしなかった。
 被告人は、証言台に顔がついてしまいそうなくらい、深く俯いて座る。

−イデ弁護人の被告人質問−
弁護人「事件のきっかけは、お父さんの貴方に対する態度ですか?」
被告人「(被告人は、下を向きながら、顔を左右に動かす)・・・・・・・・・・」
弁護人「もう一度聞きましょうか?お父さんから貴方に対する殺意はあったんですか?」
被告人「(鼻の頭を掻く)・・・・・・・・・」
弁護人「質問の内容は解りますか?」
被告人「・・・・・・・・・・・・」
弁護人「今回の事件のきっかけについて、貴方は面会の時に、いくつかあると言っていましたよね」
被告人「・・・・・・・・・・・」
弁護人「メモを見たほうが良いですか?」
被告人「・・・・・・(額を掻き、顔を上げる)え・・・・・ちょ、ちょうし(どもりが酷く、何を言っているのか聞き取れなかった)」
 こうして何かを言った後、被告人はまた顔を伏せる。手を握り、開いて、それを見ている。
 イデ弁護人は、座る。
 検察官が書類を動かす音だけが響く。
弁護人「良いですか?大丈夫?」
 被告人は、弁護人の方を見て、何か言った。
弁護人「メモを見なくても大丈夫?」
 被告人は、封筒を受け取り、ゆっくりとした動作で、中からノートを取り出す。そのノートを、手を震わせながら開ける。私から見て左側に座っている裁判官は、それをじっと見ていた。
弁護人「そろそろ良いですか?」
被告人「大丈夫」
 弁護人は椅子から立つ。
 被告人は顔を上げる。
弁護人「今回の事件は、お父さんに悪意があったのが原因ですか?」
被告人「(ノートの方を見ている)・・・・・・ち、違うと思います」
弁護人「それだけじゃないという事?」
被告人「はい・・・・・」
弁護人「他にはどのような原因があったんでしょうか」
被告人「(体を動かしながら、ノートの方を見ている)・・・・・・」
弁護人「全部で五つぐらいあるといっていましたね」
被告人「(ノートの方を見ている)・・・・・・・」
弁護人「政治の動きと関係があるとか、そういう話をしていませんでしたか?」
被告人「(体を動かしながらノートの方を見ている)・・・・・・し・・・新聞や、テ、テレビを見ていたら、自分に・・・・・・・話を、か、かけられたような気がしたんです」
弁護人「それから?」
被告人「(ノートの方を見続ける)・・・・・・も・・・・・(目を凝らし、ノートの方を見る)」
弁護人「家の中?」
被告人「後は・・・・・じ、自分の」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・じ、自分の行動が・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「自分の行動が・・・・・・世界の政治のう・・・・・動きと・・・・・日本の政治の動きと・・・・・か・・・・関係しているのではないかと思ったのです」
弁護人「うん。まだかな?」
被告人「・・・・・・・」
被告人「・・・・・・ない」
弁護人「うん」
被告人「(ノートの方を、目を凝らして見る)・・・・・・・こ、こういう言葉で良いのかは解らないんですけど、ちょ、超常現象というか・・・・・」
弁護人「そういうものを感じた?」
被告人「い、家の・・・・・家の、く、空間というか・・・・世界の空間というか・・・・・そ、そういう、変な感じになったことを、何回か感じたんです」
弁護人「感じた」
被告人「あ、後は・・・・」
弁護人「うん」
被告人「家の物が・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「こ、壊れたときがあったんですが・・・・・・台所の水道とか・・・・」
弁護人「うん」
被告人「お、お風呂の水道とか・・・・・茶の間のテレビとか・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「テレビのリモコンとか・・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「六畳の部屋の蛍光灯のスイッチとか・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・後、玄関の、隣の、へ、部屋の・・・・・ガ、ガ、ガスストーブの元栓とかが壊れた時があったんですが・・・・・・」
弁護人「はい」
被告人「・・・・・・そ、それが、僕には・・・・・し、自然に、こ、壊れたようには思えなかったんですね・・・・・・」
弁護人「何が原因だと思ったんですか?」
被告人「(被告人は、ノートの方を見る)・・・・・・・・」
弁護人「自然と壊れたようには思えなかった。それなら、何で壊れたんだろうか?」
被告人「(目を凝らして、ノートの方を見ている)・・・・・・」
弁護人「貴方なりに考えたことで良いですよ。それは。どうして家の中のものが壊れたの?」
被告人「・・・・・・い、家に居た時は・・・・・(顔を近づけてノートを見ていたが、顔を離す。しかし、再び顔を近づけ、ノートを見る)い、色々・・・・・考えたんですが」
弁護人「はい」
被告人「ち・・・・父親が・・・・・ま、魔力の、のよ、ようなものを生み出していると・・・・・お、思ったんです」
弁護人「うん・・・・・魔力。他にも考えた事はありますか?」
被告人「(顔を近づけ、ノートを見つめる)・・・・・・・・・・・」
弁護人「お母さんの・・・・(被告が何か言いかけ)どうぞ」
被告人「な・・・・ないです」
弁護人「悪意のあったことも理由の一つ?殺意があった」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「それは関係無いという訳じゃないよね」
被告人「は・・・・はい」
弁護人「誰に悪意があったと感じたんですか?」
被告人「・・・・・・ち、ち、父、は、は、母、あ、姉です」
弁護人「三人に悪意があったと思った。他にも、自分の行動と政治が関係していて、超常現象があり、原因はお父さんの魔力と?」
被告人「は・・・・・はい」
弁護人「テレビからのメッセージの内容は?どんな事を言っていましたか?」
被告人「(ノートを見つめる)・・・・・・・・・」
弁護人「あなたの、神様か悪魔かは解らないが、メッセージ。どんなメッセージが聞こえてきたんだろうか」
被告人「(顔を近づけ、ノートを見つめる)・・・・・・・・た・・・・・たくさん・・・・・あ、た・・・・・・たくさんあったと思うんですが・・・・・・・・おぼ、覚えているのは・・・・・戦え、と・・・・・・という・・・・・」
弁護人「うん。戦えと」
被告人「と・・・・と、と、という事や・・・・・・ま、負けるなと・・・・・・ゆ、ゆうような・・・・・・こ、事です」
弁護人「ところでね、さっき言っていた殺意と考えると、お父さんとお姉さんは何となく解るが、お母さんを殺さなければいけなかった理由は何ですか?」
被告人「(顔を近づけてノートを見る)・・・・・・・・・」
弁護人「別の聞き方でいうと、お母さんにも悪意はあったんですか?貴方を殺そうとしたとか、そういう事はあったの?」
被告人「(顔を近づけてノートを見ながら、小刻みに体を動かす)・・・・・・・・・・・・・」
弁護人「先ほど、弁護人の質問に答えて、お父さんの次に、お母さんに悪意があったと言いましたね」
被告人「は・・・・・・はい」
弁護人「どういう内容だったのかな?どういう意味で悪意があったと思ったの?」
被告人「(ノートを見ながら、小刻みに体を動かす。)・・・・・・・・・・・」
弁護人「その点は良く解らない?」
被告人「(ノートを見ながら、体を小刻みに動かす)・・・・・・・・・・・・(顔を起こす)い、家に居た時は・・・・・」
弁護人「家に居た時は?」
被告人「・・・・・・・・・・」
弁護人「家に居た時は?」
被告人「ち、ち、父親がぁ・・・・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「(顔を少し起こしているが、ノートを見ている)・・・・・・・・ぼ、僕に対して・・・・(ノートに顔を近づける)」
弁護人「うん」
被告人「さ・・・・・殺意を、さ、殺意を持っていると思ったんです」
弁護人「うん、それで?お母さんはどうなるの?」
被告人「(ノートを見る)・・・・・・・(ノートに顔を近づける)」
弁護人「私との面会では、消極的という言葉を使っていますね」
被告人「ち・・・・・父」
弁護人「うん」
被告人「(顔を近づけ、ノートを見る)ち、父」
弁護人「うん」
被告人「父親がぁ・・・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「父親が生み出している」
弁護人「うん」
被告人「さ、殺意が・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・・・と、とても、つ、強くて・・・・・」
弁護人「強いと。それで?」
被告人「は・・・・・・母親や・・・・・・あ、姉に・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「の・・・・・乗り・・・・・(顔を起こす)の・・・・・のり、のりう、移って、い、いるくらい・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「(ノートに顔を近づける)・・・・・・・」
弁護人「強かったと」
被告人「つ・・・・・強いと思っていたんです。だ・・・・・・だから・・・・・・・」
弁護人「だから?」
被告人「ち・・・・・父親にはぁ・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「ぼ・・・・僕に対する」
弁護人「うん」
被告人「ちょ・・・・・直接的な・・・・」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・な・・・・」
弁護人「直接的な殺意があった?」
被告人「ちょ、直接的な殺意が・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「(顔を起こしていたが、ノートにまた顔を近づける)・・・・・・・・・・・(顔を離す)ちょ、直接的な殺意や・・・・・・せ、積極的な殺意があったという言葉を使うならばぁ・・・・・」
弁護人「うん、それで言うなら?」
被告人「は・・・・・母、母親には・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「か・・・・・・間接的な殺意や・・・・・しょ、消極的な殺意が・・・・・」
弁護人「あると思う」
被告人「あ・・・・・・あったと言えると・・・・・お・・・・・」
弁護人「思う」
被告人「思っていたんです」
弁護人「消極的とは意味が解りにくいんだけど、具体的にはどんな事を言うの?」
被告人「(ノートに顔を近づける)・・・・・・・・・・」
弁護人「例えば、お姉ちゃんみたいに、『死ね』と言ったりは無い訳でしょう?お母さんはどの辺りが間接的だった?」
被告人「(顎が証言台につきかけるほど顔を下げる)・・・・・・・・・」
弁護人「宗教の集まりに、東京の方へ行っちゃう事?」
被告人「(顎が証言台に付かんばかりに、背を丸め、顔を下げている)・・・・・・・・・・・」
被告人「と・・・・」
弁護人「うん」
被告人「ふつ・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「普通の・・・・・・人、人ならば・・・・・(顔を起こす)」
弁護人「うん」
被告人「(顔をノートに近づける)・・・・・・」
弁護人「普通の人ならば?」
被告人「(ノートに顔を近づけたまま)・・・・・・・」
弁護人「助けてくれるとか、そういう事?」
被告人「(被告人は、顎が机に付きそうなくらい、背を丸めている)・・・・・・・・・・・・」
弁護人「普通の人なら助けてくれるけど、助けてくれない。そういう意味?」
被告人「ふ、普通の人なら・・・・・(被告人は、体を起こす)」
弁護人「うん」
被告人「じ・・・・自分の」
弁護人「うん」
被告人「お・・・・夫が」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「自分の夫が?」
被告人「・・・・・・こ、子供に対して・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「・・・・・・さ・・・・・殺意を持っていたら・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「と・・・・・止めると思うんですがぁ」
弁護人「うん」
被告人「(ノートに少し顔を近付け)・・・・・は、母親は、止めようとはしなかったんですね」
弁護人「そういう事に悪意を感じたわけですか?」
被告人「・・・・・・・よ、よ・・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「よ、容認・・・・・している、というか・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「や・・・・・やむをえないと」
弁護人「いう風に思った?」
被告人は、背を丸める。顎が机に付きそうになる。
弁護人「ただね、お母さんを殺す理由としては、そういう消極的なもので十分なんですか?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「それだけでお母さんを殺したという事が、貴方の中で説明が付いているのかな?」
被告人「・・・・・・・・(被告人は、体勢を維持している)」
弁護人「やっぱり、先程、最初に言っていた、悪意だけでは説明が付かないというのは、そういう事なのかな?」
被告人「・・・・・・・(被告人は、動かない)」
弁護人「どうですか?」
被告人「・・・・・・・(動かない)」
弁護人「貴方の使った言葉で言うと、お父さんの魔力という、悪意以外の影響があり、でなければ説明できないと、そういう事かな?」
被告人「・・・・・・・(動かずに、ノートを見つめている)」
弁護人「質問を先に進めましょう。今日までの裁判の中で、貴方がお母さんを殴っていた理由について弁護人が質問した所、貴方は、『何か念力で引っ張られていると感じました』と答えているが、覚えている?」
被告人「・・・・・・はい」
弁護人「覚えている」
被告人「はい」
弁護人「今回お母さんを刺した時も、そのような感覚はありましたか?」
被告人「・・・・・・(動かない)」
弁護人「何かこう、引っ張られる」
被告人「・・・・・・はい」
弁護人「あった」
被告人「・・・・・・・・は、はい」
弁護人「自分の動きと政治の関係について解りにくいが、具体的にどんな事を言うんですか?何と何が繋がっているか」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「貴方の行動と、家の中、政治の動きがどう関係しているか、解りにくいので教えて欲しいんだけどな」
被告人「・・・・・・(手を、握ったり開いたりしている。顔はノートに近づけている)」
弁護人「(被告人が顔を起こしたとき)小泉さんとか、誰と繋がっている?」
被告人「も・・・・・もう一回質問を」
弁護人「政治の動きと貴方が繋がっているといったが、例えば、誰と誰が繋がっている?それを教えて下さいと言っているの」
被告人「・・・・・・(ノートに顔を近づけている。手を動かしている)」
弁護人「貴方と誰が繋がっているの?」
被告人「・・・・・・・・・・」
弁護人「貴方と小泉さんとかが繋がっているって言ってない?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「いや、当時そう感じた」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「貴方と小泉さんと後、誰が繋がっている?」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「別に言っても貴方が政治的に危害を加えられえるわけではない。安心して良いよ」
被告人「い・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「い、家に居た時は、アメリカの大統領と自分がつながっているかも知れないと思ったんです。」
弁護人「貴方とブッシュ大統領と小泉さんが繋がっている」
被告人「はい」
弁護人「その構図で言うと、お父さんは何と繋がっているの?」
被告人「・・・・・・い」
弁護人「うん」
被告人「(ノートの方に顔を近づけ)・・・・・・き、北朝鮮と・・・・・」
弁護人「北朝鮮」
被告人「・・・・・・北朝鮮という国とか・・・・ちゅ、中国という国と繋がっているんではないかと思っていたんです」
弁護人「亀井静香とも繋がっていると思っていた」
被告人「はい」
弁護人「それで、貴方の中で戦いが起きて、次は北朝鮮と思っているわけですか?」
被告人「は・・・・・はい」
弁護人「話は変わりますが、Y1先生の話にもありましたが、平成16年8月に金槌や包丁を買ったのを覚えていますか?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「覚えていないのなら覚えていないと答えてください」
被告人「・・・・・・あま、あまり覚えていない・・・・・・」
弁護人「あまり覚えていない。包丁を買ってから今回の事件を起こすまで、6ヶ月ぐらい空いているが、貴方の中で、直ぐに戦いを始めなかったのは何故ですか?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「その辺も良く解らないかな?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「角度を変えて質問しますが、事件を起こす平成16年11月、精神的にはどのような状態でしたか?」
被告人「(顔をノートに近付け、ノートを見つめている)・・・・・・・・・・・・・・」
弁護人「事件を起こす直ぐ前の気持ち」
被告人「と・・・・・閉じ込められている」
弁護人「閉じ込められて」
被告人「と・・・・・閉じ込められているような感じだったと思います」
弁護人「トイレも行かせてもらえない状態だった」
被告人「はい」
弁護人「ご飯も食べさせてもらえない」
被告人「はい」
弁護人「自然と死に追いやられる、そんな感じだったんですか?」
被告人「・・・・・・はい」
弁護人「つまり、貴方としては、精神的にも肉体的にも相当追い詰められた状態だったのですか?」
被告人「はい」
弁護人「やらなきゃやられる、差し迫った状況だった?」
被告人「はい」
弁護人「とすれば、始めた戦いは、貴方にとって正しい戦いだったんですか?」
被告人「(顎が机につきそうなくらい、背を丸める)・・・・・・・・・・」
弁護人「どうかな?」
被告人「・・・・・・(体を起こす)ぼ・・・・僕はぁ」
弁護人「はい」
被告人「・・・・・そ、そう、お、思っていたんです」
弁護人「その関連を先に聞きますと、今回の事件が終わった後、貴方は警察に連絡をしましたね?」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)」
弁護人「110番をしている」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)」
弁護人「朝まで時間を過ごして110番していますよね」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)」
弁護人「良く覚えていない?ちょっと急に時間が飛ぶんで付いていけない?今回の事件が終わった後、あくる日の朝」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)」
弁護人「覚えてないか?」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)」
弁護人「記録によると、あなた自身は警察に連絡をしているんだけど、もう一度確認したいんだけど、その理由は何ですか?警察に連絡した理由」
被告人「・・・・・・(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)」
弁護人「何故警察に連絡したか思い出せない?前の裁判では、『説明しなくちゃならないと思っていたんです』と答えている。覚えている?」
被告人「・・・・・・・うん(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)」
弁護人「説明しなくちゃならないとは、どんな事を説明しなくちゃならないと思ったの?」
被告人「(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)・・・・・・・・・・・・」
弁護人「今回貴方の起こした事件について、お巡りさんにきちんと説明すれば、お巡りさんは解ってくれると、そう思ったの?」
被告人「(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる。ただし、この時はやや顎が浮いていた)・・・・・・・・・・・」
弁護人「うん・・・・・」
被告人「(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)・・・・・・・・・・・・・」
弁護人「面会の時に貴方が言っていた表現だと、『現実の世界に居る自分が電話した』と言ってましたね」
被告人「(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)・・・・・・・・・・・・・」
弁護人「どんな心境だったのかな?警察に電話した時に」
被告人「(顎が机に付かんばかりに、背を丸める。膝の上で手を組んでいる)・・・・・・・あ・・・・・・・(体を少し起こす)」
弁護人「何?」
被告人「あ・・・・・解らないです」
弁護人「解らないですか。別の方向から聞いてみると、今じゃなくて当時、自分のした事は無罪になる、悪くない、と、そういう風に思っていましたか?」
被告人「(背中を丸めてノートに顔を近付け、ノートを見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「今はね、色々後で考えて自分自身は混乱している、と貴方は言っていたけど、当時としては、貴方の行動について、どう思っていたの?」
被告人「・・・・・・・・・・(口をきつく閉じて、瞬きをしながら、ノートの方を見ている)」
 この時、傍聴人は、何か小声で話していた。
弁護人「何か、政治の関係で、説明してくれませんでしたか?民主主義がどうとか」
被告人「(口を開け、ノートの方を、目を細めて見ている)・・・・・・・・・」
弁護人「貴方は今日、私からの質問に対して、政治的な事で、私(被告)はアメリカと繋がっていて、父は北朝鮮と教えてくれましたね」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「それについて、当時はどんな風に考えていたの?」
被告人「・・・・・・・・(口を閉じ、目を細め、背中を丸めてノートの方を見ている)」
弁護人「民主主義と、貴方が繋がっているような話をしていませんでしたか?」
被告人「(口を少し開け、ノートの方を見ながら瞬きをする)・・・・・・わ、解らないです」
弁護人「解らない」

 3時30分から10分間休憩となる。被告人は、その間、退廷する。
 閉廷中、弁護人は、何か話し合っていた。傍聴人も、事件の事を話している。
 記者の人に聞いた所、被告人質問に対してはいつもこんな感じで、被告人は人とのやり取りがかなり苦手らしい。ただし、被告人には精神障害じみた所は無いらしい。
 被告人は、38分頃に、硬い表情で、俯いて入廷する。縄が解かれる間、やや俯いて、ズボンを上げるほかは、両手を前に出して固まっていた。被告人席に、封筒を持って座る。不安そうな目で、俯いたり、きょろきょろしたりしている。
 イデ弁護人は、「事件の解らない所について云々」と被告人に話しかけていた。
 被告人は、被告人から見て右側に居る初老の刑務官に、何かを尋ねていた。
 40分を過ぎても裁判長達が入廷しないためか、書記官が電話で何か連絡をする。
 裁判長達は、43分に入廷した。
 被告人は、封筒を持って、のろのろした動作で証言台に行き、封筒を机の上に置いて、証言台の椅子に腰掛ける。

弁護人「事件があった日に、お姉さんが、貴方に『暖房しなよ』と言ってきて、喧嘩になりましたね」
 被告人は、封筒の中を探り、上に開く帳面を取り出した。
弁護人「大丈夫かな?もう一度聞きますね。今回の事件があった日に、お姉さんが貴方に、『暖房しなよ』と言ってきて喧嘩になったことを覚えていますか?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「覚えていないのなら覚えていないと言ってください」
被告人「・・・・・・覚えてないです」
弁護人「貴方はお姉さんを殴ってしまって、お姉さんから『医者に行く』と言われた事は覚えていますか?」
被告人「・・・・・(帳面を見ている)あまり覚えてないです」
弁護人「じゃあ、お母さんを殺した事を尋ねますが、お姉さんを殺す前に、お母さんを殺す事を決めていたのは何故ですか?」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「検察官の調書では、『お姉さんを先に殺そうとして失敗したらお母さんに警察に連絡されてしまうから、力の弱いお母さんを先に殺す事にしたんです』とあるけど、それで良いのかな?」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「それで良いのかな?」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・解らないです」
弁護人「解らない。お母さんを刺した回数を覚えていますか?調書によれば三回刺したとあるが、大体そのくらいですか?」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「お母さんを刺した回数」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・」
検察官は、この時、何かを書いていた。
弁護人「お姉さんと比べるとどうかな?多い?少ない?」
被告人「(背を丸めて、帳面を見ている)・・・・・・・・・・少ないと」
弁護人「少ない。その事は覚えている」
被告人「はい」
弁護人「逆に言うと、その程度しか刺していない」
被告人「はい」
弁護人「お姉さんを包丁で切りつけた回数は、起訴状では100回と書いているが、貴方は、『正確には覚えていないが50回から60回ぐらい』と言っている。それで良いかな?」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「お姉さんを刺した、いや、切りつけた回数」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「大体、5,60」
被告人「・・・・・はい」
弁護人「それから、お姉さんを銀色の金槌・・・・八角玄翁で殴った回数は、10回ぐらいと答えている」
被告人「・・・・・」
弁護人「起訴状には、数十回と書かれているが」
被告人「・・・・・」
弁護人「8,9,10回?」
被告人「・・・・・はい」
弁護人「起訴状は、貴方や、遺体の状況について、少し多い回数になっているのかな?」
被告人「・・・・・も、もう一回言って・・・・・」
弁護人「警察官の調書では、少し多い数字になっているのかな?」
被告人「・・・・・」
弁護人「あなたの方から、何回刺した、殴ったと言った事はありますか?」
被告人「い・・・・・いっ、言ってないと思います」
弁護人「お巡りさんの方から何回だねと言ったのでそう答えたか、曖昧な返事をして、それが調書に載った」
被告人「・・・・・」
弁護人「うん、でね、その・・・・・・、お姉さんに対して、何回も切りつけた後に、記録によってしか解らないけど、さらに銀色の金槌で殴ったことになっているけど、どうしてそういう事をしたのかな?」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「何故、きりつけて倒れているお姉さんに対して、さらに銀色の金槌を振り下ろしたの?」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「覚えていない?」
被告人「(少し顔をおこし)・・・・・・・は、はい」
弁護人「お父さんを殺した事について、金槌で殴った回数は、罪状認否の時に、顔だけで30回、胸を10回といっているけど、それだけの回数で良いのかな?」
被告人「・・・・・・・・」
 この時、検察官は、書類を見ていた。
弁護人「一番最初の裁判の時に、罪状認否で、顔30回、胸10回ぐらいと言っているが」
被告人「は・・・・・はい」
弁護人「つまり、起訴状に書いてある回数よりは少ない」
被告人「はい」
弁護人「お父さんを殴り付けている時に言った言葉は覚えていませんか?」
被告人「・・・・・・・は、はい」
弁護人「じゃあ、本件の行為後のことについて若干のお尋ねします。貴方は、今回の事件を起こして、着ている物に返り血が付いたのに着替えもしないで、一晩いたのは何故ですか?」
被告人「・・・・・・(ノートを見ている)・・・・・・わ、解らないです」
弁護人「貴方は事件を起こして、次の日に警察に連絡する間、夜は眠れましたか?」
被告人「(目を閉じている。顎が机に付かんばかりに、背を丸めている)・・・・・・・・・・・・」
弁護人「あるいは、一睡もしていない」
被告人「わ・・・・・・解らないです」
 検察官は、何かを書いていた。
弁護人「さっき途中で終わってしまったことをもう一度聞きますが、警察に連絡をした時、貴方は自分のやったことを正しいと思っていた?間違ったと思っていた?どっちですか?」
被告人「・・・・・・・(下を向き、手を見ている)」
弁護人「今日の最初の私の質問に対しては、貴方にとっては正しい戦いだったと答えているが、どうかな?」
被告人「・・・・・・・(下を向いて、手を見ている)」
弁護人「今じゃないですよ、警察に連絡した当時」
被告人「あ・・・・・はい」
弁護人「連絡した当時は、正しいと思っていた?間違いだと思っていた?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「どちらですか?ここはぜひ答えて欲しい。どうなの?」
被告人「(手を見ている)・・・・・・・・・」
弁護人「民主主義を守る戦い、と話していませんでしたか?」
被告人「(帳面のほうを見たり、手を見たりしている)・・・・・・・・わ・・・・・・・解らないです」
弁護人「少しそういうことを言うの恥ずかしい?そういう意味じゃない?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「じゃ、先へ進みましょうか。ちょっととっぴ拍子も無い質問で申し訳ないけど、あなたは現在、自分を病気だと思いますか?」
被告人「(瞬きをしながら、帳面のほうを見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「あるいは普通だと思う?自分の感覚で良いですよ?」
被告人「(瞬きをしながら、帳面のほうを見ている)・・・・・・・・・・」
弁護人「今までに、接見、面会の時や、鑑定をした先生といろいろなやり取りをしましたね。その時、違和感というか、食い違いを感じた事はありますか?感覚の違いというか」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「それは、あるという事?」
被告人「あ・・・・あります」
弁護人「あるか。君も私も専門じゃないけど、異常じゃないかと感じる事はある?」
被告人「あ・・・・最近は・・・・」
弁護人「うん、うん」
被告人「(帳面のほうを見ている)・・・・・」
弁護人「最近は?」
被告人「ぼ・・・・僕の」
弁護人「うん」
被告人「こ・・・・心の中には」
弁護人「うん」
被告人「他の人と・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「(帳面を見る)・・・・・・ぼ・・・・僕の心の中には・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「ほ・・・・・他の人と、違う世界が・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「あるのではないかと・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「思う事があります」
弁護人「それは、どんな世界?」
被告人「(帳面を見ている。あるいは、単に俯いている)・・・・・・・」
弁護人「どんな感じの世界ですか?それは」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「今回の事件の後、他の人の声が聞こえるなどはありますか?」
被告人「・・・・・・・は」
 左側に座っている裁判官は、被告人の方を見ていた。
弁護人「ある?ない?」
被告人「は・・・・はい」
弁護人「あるという意味ですか?」
被告人「・・・・は、はい」
弁護人「どんな声が聞こえるの?」
被告人「(帳面のほうを見る)・・・・・・・」
弁護人「どんな事が聞こえるの?」
被告人「・・・・・・い、い、意味が、よ、良く解らないような事を・・・・・・」
弁護人「うん」
被告人「ゆ、ゆ・・・・・・(帳面を見る)ゆっているんです」
弁護人「貴方は今、拘置所では一人でしょ?」
被告人「はい」
弁護人「隣の房の人の話ではないの?」
被告人「・・・・・・ち、違うと、お、思います」
弁護人「違うというのは解る」
被告人「はい」
弁護人「意味のわからない声の中で、事件に関するメッセージは聞こえてきた?事件の後」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「何か言ってましたか?その声が」
被告人「・・・・・・・(背を丸め、帳面を見ている)」
弁護人「あるいは、声の内容については覚えていない?どうだろう?」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「事件のあった時には、戦いという声が聞こえてきた。それと同じように聞こえてくる?それとも、事件のあった時と最近の聞こえ方は違うのかな?」
被告人「(背を丸め、帳面を見ている)・・・・・・おな、同じような感じだったと思います」
弁護人「房の中って、テレビなんかは無いよね」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「新聞は見れるのかな?」
被告人「・・・・・・・・・」
弁護人「今、留置場の中で、新聞は見れるの?」
被告人「見て、見ていません」
弁護人「房の中で座っていて、そういう事が聞こえてくると。私からは以上です」

 続いて、眼鏡をかけたホシノ弁護人の被告人質問

−ホシノ弁護人の被告人質問−
弁護人「貴方は、子供の頃からお父さんに暴力を受けたりしていたんでしょう?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「子供の頃からお父さんに暴力を受けていたんでしょう?」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「小さい頃からお父さんから虐待されていると思いましたか?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「小さい頃、お父さんから憎まれている、邪魔にされていると感じた事はある?」
被告人「・・・・・・わ、わから、解らないです」
弁護人「解らない。じゃあ、お父さんは、子供の頃、お姉さんのことは大切にしていましたか?」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「貴方の事は大切にしていました?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「どうもお姉さんと比べて自分がお父さんから大切にされていないと思った事はありましたか?」
被告人「は、はい」
弁護人「どうして、子供の頃、お姉さんとこんなに扱いが違うんだろう、と考えた事はありましたか?」
被告人「・・・・・あ、余り、無い、無いです」
弁護人「今は、考えたりします?」
被告人「(極端に背を丸めている)・・・・・・・」
弁護人「今までの裁判では、あまたは子供の頃に、お父さんから暴力を受けていた」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「周りから見ると、お父さんから虐待されていると感じるんだけども、自分ではお父さんから虐待されていると思った事は?」
被告人「・・・・・・(手を見ている)」
 この時、傍聴人は、小声で話をしていた。
弁護人「質問を変えるけど、私が会いに行ったとき、お父さんから邪魔にされている、と言った記憶はある?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「じゃ、質問を変えましょうか。貴方は、飯嶋家の長男ですね」
被告人「はい」
弁護人「長男だったら、普通、跡取りとか見られると思うけれど、お父さんから、飯嶋家の跡取りと認めてもらってました?」
被告人「みと・・・・認められて・・・・・・い、いなかったと思います」
弁護人「お父さんは、誰が後取りだと考えていたと思いますか?」
被告人「・・・・・姉と思います」
弁護人「私は跡取りと言ったけれど、お父さんはお姉さんの事を自分の後継者みたいに考えていたと?」
被告人「わ・・・・・解らないです」
弁護人「お姉さんが家に戻ってきて、お姉さんの子供も一緒に家に住むようになったでしょ?それについて、貴方はどう考えていました?」
被告人「・・・・・・わ・・・・・・・解らないです」
弁護人「貴方は、他の人と会った時に、自分に生命保険をかけていないか、お父さんが自分に生命保険をかけたんじゃないかと気にしているけど、それはどうして?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「私に対して、家に私にかけた生命保険があるかも知れないから探してくれ、と言った事は覚えています?」
被告人「・・・・・・はい」
弁護人「何でそんなに生命保険が気になるの?」
被告人「・・・・・・・」
弁護人「上手く説明できないけど気になるの?」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「少し話は飛ぶけど、お母さんが、貴方の事について保健所に相談に行ったことは知っていますね?」
被告人「・・・・はい」
弁護人「貴方の生活態度に問題があるから相談に行ったらしいんだけど、貴方は自分の生活態度に問題があると考えていましたか?」
被告人「・・・・もう一回」
 弁護人は、質問を繰り返す。
被告人「・・・・な、ないと思っていたと思います」
弁護人「何で問題が無いのに保健所に相談に行ったと思います?」
被告人「・・・・・・・(帳面を見ている)・・・・・・わ、解らないです」
弁護人「お母さんは自分の意思で保健所に行ったか、誰かの意向で行ったか、その辺は解ります?」
被告人「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
弁護人「誰かがお母さんの事を行かせたと思った事はあります?」
被告人「・・・・・わ、解らないです」
弁護人「お母さんが、貴方に問題があると保健所に行った事を知ったとき、お母さんに対してどのように思いました?」
被告人「・・・・・・・・・わ、解らないです」
弁護人「また話が飛んじゃうんだけども、事件のちょっと前に、自宅のリフォーム工事をしていましたね。それは覚えている?」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「工事について、貴方は考えた事、思った事はありましたか?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「例えば、五月蝿かったとか、人が出入りして嫌だったとか思った事はあります?」
被告人「・・・・・・」
弁護人「じゃ、細かく聞いていきますが、リフォームで、知らない人が家に出入りしていた」
被告人「はい」
弁護人「水周りの人もやってきて、その時に、貴方はトイレとか我慢したりしませんでした?」
被告人「・・・・・・し、したと思います」
弁護人「知らない人が来るのは嫌だったでしょう?」
被告人「はい」
弁護人「音を立てられるのも嫌だった」
被告人「は、はい」
弁護人「リフォームをやろうと言い出したのは、お父さんだった」
被告人「はい」
弁護人「その理由を考えた事はあります?」
被告人「・・・・・・・・(帳面を見ている)」
 検察官は、何かを紙に書いていた。
弁護人「じゃあ、簡単に聞きましょう。リフォーム工事をしていて、嫌でしたか?」
被告人「・・・・・・は、はい」
弁護人「最後に一つだけ聞きます。被告人は、弁護人に対して、自分の部屋のある場所を見てください、と言ったのは覚えています?」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「今回の事件と部屋の場所には、何か関係がありますか?」
被告人「・・・・・は、はい」
弁護人「どんな風な関係があるんですか?」
被告人「・・・・・・・・」
弁護人「上手く説明できない?」
被告人「・・・・・・・・は、はい」
弁護人「じゃあ、もし、仮に、貴方の部屋が違う場所にあったら、今回の事件は起きていましたか?」
被告人「・・・・・・・・お、おき、おきていなかったと思います」
弁護人「上手く説明できないけれど、部屋の場所が関係あると」
被告人「は、はい」
弁護人「お父さんの普段いた部屋と、貴方の部屋は、同じ面積だけど、貴方の書いた図面では、貴方の部屋は非常に小さく書かれている。そういうのを意識した事はありますか?」
被告人「・・・・・わ、解らないです」
弁護人「自分でわざと小さく書いた記憶は?」
被告人「な・・・・・・無いと思います」

 この日は、これで被告人質問は終わった。
 次回は、検察官側の被告人質問が行われる事になる。それが終われば、鑑定人の質問が行われる。次回は、3月17日10時30分からとなる。
 被告人は、その事が説明される間、前を見て、瞬きをしていた。退廷する時は、傍聴席に目をやることなく、ゆっくりとした足取りで退廷した。
 公判は、4時40数分ぐらいに終わった。

 閉廷後、弁護人たちは、4人で何かを話していた。

事件概要  飯嶋被告は引きこもっていることを父や姉から責められていたため、2004年11月24日、茨城県土浦市の自宅で両親と姉を殺害したとされる。
報告者 相馬さん


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