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拝啓お医者さま しあわせでした
医師を支える患者と家族からの手紙
2008年6月27日(金)0時0分配信 AERA
掲載: AERA 2008年6月30日号
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プライド支えてくれる
1992年のことだ。当時はアメリカでも人工呼吸器を外すことはタブー視されていた。女性が亡くなって3日後、子どもたちから手紙が届いた。竹村さんは一瞬、抗議かと身構えたが、文面には温かい言葉が満ちていた。感謝の手紙だった。
「あの経験から、患者さんの意思をできる限り尊重し、『患者さんの生きている世界』の中で問題を解決する家庭医としてやっていこうと決意しました」
独協医科大学脳神経外科(栃木県壬生町)の金彪教授(52)のもとに今年、3年ぶりに研修医が入ってきた。外科系はどこも志望者の減少が深刻だ。金さんはその原因をこう考える。
「外科系が『4K職場』だからです。きつい、危険、厳しい、カネにならない」
大病院勤務の外科医は、たいてい週70時間は働いている。重症患者が多く、患者が死亡して医療紛争に巻き込まれる危険も大きい。そのうえ、どんなに多くの難手術をしても勤務医の収入は増えず、時給にすれば3000円に満たないという。
疲れ果てて病院を去る外科医も増えている。そんな状況下で診療している金さんにとって、患者からの手紙は、「プロの脳神経外科医としてのプライド」の大きな支えだ。
——いろいろありがとうございます。静かに復活の気持ちです
金さんの机の上は、毛筆の太い字で書かれた手紙が飾ってある。他の手紙も、印象に残るものはファイルしている。
「自分の生命力を患者さんにあげるつもりで手術に臨んでいます。患者さんの感謝の手紙は、そんなプロとしてのプライドを補強してくれます。最近、何をしても『ありがとう』の一言さえ言わない患者さんが増えているだけに、うれしいものです」
「医療崩壊」と言われ、医師を取り巻く環境が日々悪化している今、感謝の気持ちを素直に綴った患者や家族の手紙が医師たちを支える力は、書いた本人が想像する以上に大きい。
編集局 大岩ゆり
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