【エルサレム=村上伸一】日本の文部科学省の奨学金を得て電気通信大学(東京都調布市)への留学が決まったパレスチナ自治区ガザの青年が、イスラエルによる境界封鎖でガザを出られず、日本に行けない状態が続いている。在イスラエル日本大使館がガザ出入りの許可権を握るイスラエル軍に働きかけているが、めどは立っていない。
ガザ市の赤十字国際委員会(ICRC)で働くアブデルラフマン・アルアバシさん(23)。地元のイスラム大学を卒業し、日本でロボット工学を学びたいと応募。今年の大卒対象国費留学生としてガザでは1人だけ選ばれた。
アルアバシさんは電気通信大の情報システム学研究科への登録が決まり、4月の入学に間に合うようガザを出る予定だった。ところが、イスラエルと敵対するイスラム過激派ハマスが昨年6月にガザの支配を始めてから、イスラエル軍はガザへの人と物の出入りを大幅に制限。人の場合は「外国の病院で治療を受けるなど、命にかかわる人道支援に限る」ことになった。
電気通信大は特殊な事情を考慮して柔軟に対応するとしており、入学許可はまだ有効だ。アルアバシさんは「日本の先端技術を学んで、絶望的なガザの発展に生かしたい」と希望を捨てていない。
日本大使館の担当者は「ガザからの留学は過去にも時間がかかったが、今回の例は珍しい」と語る。ただ、米国の代表的な奨学金制度のフルブライト留学生たちも足止めを食らっていたが、一部にガザを出る許可が出ており、その波及を期待しているという。