2008-04-24
続・承認の分配
承認は得られなくても死ぬわけではない。しかし、得られないときついんだろう。僕は作家志望者の集まるサークルいくつかに属していた(いる)。そこでは横並びの仲間意識とは別に、実力の序列というものもあった。特に、新人賞を実際に取ってしまった人間と、一次選考も通らない人が明確に別れてしまうと、「あいつはまぐれ」「所詮はラノベ」「下読みは俺のを読めてない」「下読みは運」だとか、負けた人間がする言い訳をよく聞いてきた。そう考えないと、心が安定しないんだろう。
僕も一時落ちは繰り返した。そのたびに悔しいんだけど、下読みのせいにはしなかった。勝者を賞賛し、悔しいのをこらえて「自分がまだ足りないんだ」と考えて必死に読んだり書いたりした。ところがこうはしない人がいる。「自分は天才で受賞できる実力があるはずだ」と思い込んでいて、下読みの判断を受け入れない。もちろん、下読みが読み損ねることはもちろんある。彼は本当に天才で生まれてきた時代が早すぎるのかもしれない。でも、明らかにダメなのを書いている人もいる。
そこでルサンチマンが生じる。面倒なのでwikiを引用すると、
ルサンチマンは、嫉妬や羨望と結びついた憤りや怨恨の感情である。すなわち、ある感情を感じたり、行動を起こしたり、ある状況下で生きることのできる人に対して、それができない人が感じる(自己欺瞞に基づいた)憎しみや非難の感情である。
明らかにルサンチマンなのに、それを認めないで合理化した非難や攻撃を繰り返す。こういう光景はすごくあちこちで見た。「自己欺瞞」というのは顕著で、彼は、自分自身で思っている自己評価、に見合う評価を他者から得られないで、自己評価を下げるということが出来ないから他者に原因を求めているのだろう。
膨れ上がった自己評価というのは「幼児的万能感」というやつだ。普通は成長とともにこれを断念するはずだ。誰だって創作者はそれを味わって、そこから地道な努力を続けているはずだ(と思う)。ところがこの「断念」をしない人がいる。「断念」しないで、他者を攻撃する。これが宇野さんの言う「切り捨てるしかない」人たちだろう。
幼児的万能感の気持ちよい世界を捨てるのは社会のため、他人のためだ。だから、「大人」とかが評価されるのは、この幼児的万能感の気持ちよい世界を捨てる代償という部分もあるのではないだろうか。
しかし、敗北する人々というのは絶対出るわけで、ルサンチマンも生じる。これをどうするか。そこでゲームの登場である。花沢健吾の漫画『ルサンチマン』も、ゲームの中で承認や愛を手に入れるというものだった。『戦国無双』とかやってるとやたら褒められるし、ギャルゲーとかも、無条件で自分を認めてくれる。人間が与えてくれない承認を、機械が与えてくれるわけだ。自分は切り捨てられる「雑魚」ではなく、切り捨てる「英雄」であるという錯覚を与えてくれる。ゲームは「英雄」譚が異様に多い。一般市民の地味な日常とかはあまりゲームにならないですね。
現実が与えてくれない「承認」をゲームから獲得することで、ルサンチマンを「ゲーム」の中の暴力などで解消する。承認を与えられない人々は絶対生じるから、救済として、そしてルサンチマンの解消することで優れたものが安全になるために、ゲームというのはある程度有効に機能していると思われるのだ。もちろん、本当の社会問題から社会運動へ向かうべきエネルギーをガス抜きしている側面もあると思うけど。
与えられない「承認」をゲームやネットから獲得する道はダメだろうか? それでもやはり「現実」が不安として迫ってくるのだろうか? 社会的承認から完全に見放されているかのような人々が、漫画喫茶で、何ヶ月もずっとゲームをし続けているのを見て、彼らはネットゲームをしながらも、「友達」とか「承認」とか「尊敬」とか「愛情」が本当は欲しいのかもしれないなぁ、と、今漫画喫茶で働いてて、思った次第。しかし、今のところ「ゲーム」だけじゃ満足そうに見えないな、確かに。
(追記:これは結構頭にきている状態で書いているから消すかもしれない。傲慢な気もするし)
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