東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

北の核申告 『検証』を早く厳格に

2008年6月27日

 北朝鮮の核問題はようやく「核計画の申告」にこぎ着けた。ただ「すべての」という条件は満たしていないようだ。まずは申告内容の早急にして厳格な検証が求められている。

 六カ国協議の議長国である中国の外務省は、北朝鮮が核計画の申告書を提出したと発表した。

 申告は六カ国協議の合意に基づき行われたもので、核放棄に向けた「第二段階措置」の柱である。昨年末までが期限だったが、ようやく実現した。停滞していた六カ国協議も動きだすことになり、一つの節目を迎えた。

 米国も北朝鮮のテロ支援国家指定などの解除を米議会に通告する手続きに踏み切った。

 申告書には、北朝鮮が抽出したプルトニウムの生産量、関連施設のリストや稼働状況などが記載されているはずだ。

 今回の申告は一歩前進ではあるが、前もって行われた米朝折衝や米高官発言をたどると、「すべての核計画の完全かつ正確な申告」(六カ国協議の共同声明)という条件は満たしていないようだ。

 まず、現存の核兵器は「次の段階で究明する」(ヒル米国務次官補)と除外されたという。また、高濃縮ウランによる核開発計画とシリアへの核協力については、別文書で米国へ提出する。

 かつて、ブッシュ政権はこれらの核計画も網羅した申告を求めていた。そうでなければ、「非核化」に抜け穴をつくるからだ。しかし、来年一月の任期切れを念頭に妥協したようだ。

 将来に禍根を残さないようこれからの取り組みが大切だ。

 そのためには六カ国ですでに合意している外相会談を開いて、核兵器廃棄などの「第三段階措置」への早急な着手を決めるべきだ。

 現実の脅威である核爆弾をそのままにしては、せっかくの合意も「画竜点睛」を欠く。

 同時に、六カ国協議の代表会合では、申告内容の精査、現地検証の具体的な検討が急務だ。

 テロ支援国家の指定解除は、議会通告から発効までに四十五日間の猶予がある。ライス米国務長官は、「北朝鮮が検証に非協力なら制裁を再発動したり、新たな制裁を科す」と言明している。厳格な検証を期待したい。

 日本にとって、指定解除は拉致解決の大きなテコを失う恐れがある。政府は、この期間に北朝鮮が約束した被害者の「再調査」の具体策を詰めなければならない。時間との競争だ。

 

この記事を印刷する