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【社説】

IWC総会 正常化へ動き始めた

2008年6月27日

 チリ・サンティアゴで開かれている第六十回国際捕鯨委員会(IWC)年次総会で主要国による作業部会の設置が決まった。IWCの正常化に向け、捕鯨国と反捕鯨国ともに真剣な努力が必要だ。

 一九八二年の総会で商業捕鯨の十年間モラトリアム(一時停止)が可決され、八六年度末に日本が商業捕鯨から撤退して二十年以上。毎年繰り返されてきた捕鯨国と反捕鯨国の非難合戦にようやく終止符を打つ道が開けた。

 今週から始まったサンティアゴ総会はIWCの将来や重要問題を取り扱う作業部会の設置で合意した。

 IWC加盟国は現在八十一カ国。作業部会には主要二十四カ国が参加する。内訳は捕鯨国側が日本、中国、韓国、ノルウェー、アイスランドなど十カ国。反捕鯨国は米、英、オーストラリア、ニュージーランド、ブラジル、アルゼンチンなど十四カ国である。

 取り上げるテーマは日本が強く求めている沿岸小型捕鯨の再開や鯨類資源の適切な管理を行う改訂管理制度(RMS)の完成など。また反捕鯨国側は禁漁区(サンクチュアリ)の拡大や日本の調査捕鯨の在り方などで合計三十三項目もある。

 今年秋に初会合を開き来年三月ごろのIWC中間会合を挟んで議論を重ね、六月のポルトガル・マデイラ総会で「合意パッケージ案」提出を目指すという。

 これまでの激しい対立から考えると今回の合意は画期的である。機能不全のIWCの正常化を目指し、話し合いで合意点を探ることを確認したことは評価できる。

 持続的捕鯨を訴えてきた日本は昨年の米国アンカレジ総会後、IWCからの脱退をにおわせたことがある。米国やデンマークなどの先住民生存捕鯨で日本は賛成票を投じたが、日本の沿岸小型捕鯨は反捕鯨国の反対でつぶされた。

 IWCはもともと国際捕鯨取締条約に基づき一九四八年に設立された「鯨類資源の保存と捕鯨産業の秩序ある発展」を目的とする国際機関である。本来の姿に戻すことは加盟各国の義務だ。

 ただ先行きに楽観はできない。捕鯨・反捕鯨国双方がどこまで譲歩するかが鍵だ。日本が沿岸小型捕鯨に焦点を絞れば、反捕鯨国は南極海での調査捕鯨の縮小あるいは撤退を求めるだろう。商業捕鯨再開ははるかにハードルが高い。重要事項の改正には総会で四分の三以上の賛成が必要だ。大局的判断が欠かせない。

 

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