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2008/06/27

平田弘史より他に神はなし

インドへ馬鹿がやって来た インドへ馬鹿がやって来た
価格:¥ 1,575(税込)
発売日:2008-03

平田弘史という漫画家がいるわけだ。実は伊豆高原に住んでいて、おいら、一度だけ会った事があります。知人が伊豆高原でフリーマーケットをやっていて、どういうわけか知らないが、平田センセがそのポスターをマックで作製しているわけだ。まったくのボランティアで、原稿は描かなくともフリーマーケットのポスターは描く。そういう人です。

ところで、この人、デビューが1958年、1960年代に何度も筆禍事件を起こして新聞を騒がせたんだが、描くのが時代物で、初期から「巨匠」の風格を漂わせていたため、「まだ生きてたの?」とか「もう100歳くらい?」とか言われるんだが、そんな化け物ではありません。元祖オタクみたいな人で、竹熊健太郎と組んで「萌え」Tシャツ作ったり、秋葉原に行って「ワシの求めるモノはもはやない」と絶縁宣言したり、「MacのOSXなど糞食らえである」と吠えたり、70歳になるんだが、まだまだ元気です。漫画家は早死にの人が多いので、この方には是非、長生きして貰いたいです。で、筆禍事件のひとつが
血だるま剣法なんだが、

話は剣の道一筋のお兄さんが師匠に裏切られ、心身ともに壊れていく話。ただ、なにせ剣の道の人だから、一人で勝手には壊れてくれないわけですね。とにかく強い。師匠なんか、話が始まったとたんにばっさり斬られ、壁に刀で昆虫標本みたいに釘づけ(正確には刀づけ)にされちゃいます。そんでその師匠の片腕を切り落とし、それを筆みたいに使って壁に書く言葉が「おのれらに告ぐ」。どうです、面白そうでしょう。

ま、そのあとそのお兄さんをみんなが殺そうとするんだけれど、返り討ちの山。最後にどうなるかは、読んでのお楽しみということで。

貸本漫画時代に描かれて、部落解放同盟の抗議で焚書されてしまうんだが、その後、「おのれらに告ぐ」というタイトルでリライトされている。

血だるま剣法・おのれらに告ぐ 血だるま剣法・おのれらに告ぐ
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2004-09

貸本時代のオリジナルは、ごく少数が倉庫に残されていて、それを版元の社員だった山上たつひこがパロディにしたり、山松ゆうきちがインドへ持っていってヒンディ語版を発行したり、最近になって40年ぶりに復刻されたり、数奇な運命をたどる。まぁ、アレだ、平田弘史と日野日出志というのは、漫画好きにとっては、少年期に浴びるトラウマシャワーみたいなもんで、コレを「体験」しないと一人前の漫画マニアにはなれません。

で、以前にもこの人については書いているので、ひみつ倉庫から引っ張り出して再録しておきます。



おいおい、反日はどうしたんだ? 2007/3/20

タイの山奥にドイメーサロンという場所があって、毛沢東の共産党と戦った国民党の残党が住んでいるんだけどね。台湾に逃げられなくなって取り残されたわけだ。で、阿片作ってゲリラやっていたんだけど、タイ国王の御慈悲をもってタイ人として戸籍を取得して、やっと定着したわけだ。で、この将軍の跡取り息子っていうのがおいら友だちなんだが、こないだ行ったら日本刀紛いの刀を見せてくれた。「本物か?」と聞くから「そら、違うよ、コピーだ」と説明してやったら残念そうな顔していたけどね。なんせ山田長政のいたタイだもんで、偽物が売れるらしく、そういうのを作って売るヤツがいるわけだ。で、山田長政というと日本では英雄なんだが、タイでは「怖い人」というイメージで捉えられているらしく、アユタヤでは子守歌で「♪良い子にしないと ヤマダナガマサが来るよ♪」と唄われるそうである。 で、中国の反日活動なんだが、彼らの描く日本人のイメージというのもそれに近いものであって、もっとも、おいらみたいに東南アジアをウロウロしていたりすると、コワモテに見られること自体は決してマイナスではない。怖い人だと思われていなかったら、タイマフィアの巣窟で人身売買の現場に立ち会ったり、サファイアの採掘現場でマシンガンで警護されたボスに会いに行ったりとか、出来なかっただろう。せっせと反日運動やって頂いて「日本人は鬼」「怒らせたらどうなるか判らない」と思わせておいた方が利口だ。で、北京では若者のあいだで日本式の剣道愛好家が増えている、という話題
日本式剣道は、中国都市部に住む若者の、人気スポーツの一つになったと言えるだろう。多くの人々が剣道をフィットネスプログラムと見なし、都心生活のストレス解消法になると考えている。また、相手を攻めるだけではなく、都心生活に必要な「守ることと忍耐力」を身につけることができる。これらの点が、中国都市部で剣道が受け入れられた大きな理由だろう、と専門家は分析している。
と、もっともらしい解説が付けられているんだが、基本的には「日本剣法は凄い」というイメージが先行しているんだろうと思う。なんといっても南京100人斬りだもん(爆) 実際には、一本の日本刀で100人も斬れるわけがないんだけどね。相手が動かないように固定しておけば、一人二人くらいは首を飛ばせるかも知れないが、うまくやらないと刃こぼれしてしまう。そのため、江戸時代には、首斬りは山田浅右衛門一門が専門職として継いでいた。ちなみに首斬り代は一銭も貰ってなかったそうで、身分も浪人である。というのも、浅右衛門の本職は「日本刀の鑑定・試し斬り」「死体から抜いた内臓を漢方薬として売買」なので、死体さえ貰えればカネは要らないわけだ。と、奇しくも山田長政と浅右衛門と二人の山田が出てきたわけだが、山田とか山本とかいう一族は平家筋の海洋民族末裔であって、ルーツはシュメールにあり、邪馬台国の血筋だとか何とか、八切止夫が言ってたなあ。まぁ、近所に山田さんがいたら、それは凶暴な人なので怒らせないようにしよう。 で、お馴染み、平田弘史なんだが。下の作品は幻の名作と呼ばれた「血だるま剣法」だ。彼の最高傑作と言われつつ、部落解放同盟からのクレームで長く絶版になっていた。ストーリーは、
被差別部落の出である幻之助は、剣の道で身を起こし、同じような差別を受ける部落民を救おうと修行に励んでいたが、異常ともいえる稽古熱心さから他の門弟たちからは忌み嫌われていた。やがて幻之助が被差別部落の出であることが他の門弟たちにもばれ、幻之助への風当たりはますます強くなり、さらに師の一伝斉までもが自らを殺そうとしていることを知ると、ついに幻之助は発狂する。師を殺し、宣言どおりに他の門弟たちを次々と惨殺していく幻之助。物語は、際限なき血みどろの復讐劇へと突き進んでいく。
というモノで、これで40年間、封印されていたわけだ。で、42年ぶりに復刻された本も、伏せ字だらけであるが、絵の迫力は凄まじいのひと言に尽きる。平田弘史マニアは、実はアメリカにも多くて、日本のサムライというイメージにピッタリなので愛好されているようだ。アメリカにはフランク・フラゼッタみたいに表紙絵描くだけで稼げる絵描きも多いんだが、日本の優れた漫画家は一人で表紙からストーリーまでやるから凄いね。


【平田弘史】それがし乞食にあらず【萌え~】 2007/3/23

なんたって、タイトルが格好いいや。タイトルだけでイッちゃいそうだ。しかし、この人、異常に作品が少ないんだよね。21歳でデビューして今年で70歳。もう50年も漫画を描いているのに、単行本も少ないし、長編も少ない。これでメシが食えるのかね? と心配してしまうほどだが、その分、中身は濃い。砲丸投げの室伏お兄ちゃんか平井堅かというくらい、濃い。こないだも血だるま剣法についてちょっと紹介したら、Amazonの売上げが一日で5冊という新記録で、今を盛りのフルフォード並みの人気だな。実際、この人の単行本は何度も何度も版を変えて出され、いずれも売れている。つげ義春と同じで、原稿料よりも印税で食っている作家なのだろう。 で、今回は幻の名作のもうひとつ、「復讐つんではくずし」について書こうと思ったんだが、これは今でも入手困難で、25000円もする復刻版でしか読めないので断念。リメイクされた「大地獄城」は読んだような記憶があるんだが、ストーリーを覚えてない。なんでも、手足をもがれてオトタケクン状態、しかも歯も全部抜かれてフガフガになった武士が敵の喉笛に食らいつくような話だったような気がするんだが・・・
「つんではくずし」は、この単行本では「大地獄城」というタイトルになっているが、一族を殺害して国を奪った武将に対して、滅ぼされた家の遺児が復讐を果たそうとするという物語。主人公の太平は戦乱のさ中に片足を失うも、その強力でもって武勲をあげ、身分を偽り仇の武将の元で仕官して出世を果たす。そして相手が完全に信頼しきったところで復讐に転じるのだがその様子がすさまじい。凄惨な拷問を行い、生爪をはがし目をえぐり、腕や足が腐ってきたらそれを切り落とすといった具合に、体の部位を一つ一つ奪っていく。しかし相手に死ぬことは許さず、気も狂わんばかりの労役につかせるなど、ありとあらゆる人道にもとる行為を加えていく。復 讐が復讐を呼んだ末の愚を、これでもかこれでもかとものすごい濃度で描き連ねていく様子はまさに圧巻。その残酷描写の強烈さには度肝を抜かれるし、何よりお話としても面白い。古さをまったく感じさせない迫力ある一作。
と紹介しているサイトがあるね。あるいは、別のサイトでは
ひ、ひえ~~!! こ、こ、怖かった~~~!! 思い出したよ、歯の抜かれた口で喉笛に食らいつくシーンを! 四肢を斬られてダルマ状態になった身体でにじり寄るシーンを! あまりの怖さに忘れようとして、すっかり今日まで忘却の彼方だった。 改めて読んで、改めて恐ろしかった。 物語が怖いのではない。――ひ、平田先生、私は貴方が恐ろしいっ!! 貴方はこんなに、このように女性的(!)な人だったのか? 愛と憎しみにすべてを捧げる人だったのか!?
というのも。幸いにして幼少時代にこの作品に巡り会えた人は、ほとんどがトラウマとなって記憶に残ってしまう漫画なのだ。実に、日本の漫画史に残る大傑作なんだが、なんせオトタケクンが敵に食いつくような話なので、残酷過ぎると叩かれて封印されてしまった。今でも限定の復刻版でしか読めない。ただし、リライトした大地獄城は普通の単行本で出ているので、陰謀書店でどうぞ。つうか、陰謀書店に平田弘史のページ、作りました。それにしても、24歳、設備屋アガリの地方の青年が、独学でこれだけの作品を描いたという時代に驚くね。 で、実は平田センセイ自身は極めて温厚でやさしい人で、原稿は描かなくても地元のフリマのポスターは一生懸命に作るような、そういう人柄だ。こないだ脳梗塞で倒れたたけくま君が以前「平田弘史の萌えTシャツ」というのを作ったのを思い出すなぁ。雑誌の企画でインタビューして書いてもらった色紙を元にTシャツ作ったそうでw 平田弘史は漫画は描かないが、他人の漫画の題字を書かされるのでも有名で、大友克洋の『AKIRA』の題字もそうだ。

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