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ドクターヘリ、全国で導入の動き 「特措法」施行3カ月 (2/2ページ)

2008.6.27 00:42

 救急医療では、心臓停止で3分、呼吸停止で10分、大量出血で30分経過すると、死亡率が50%に達するとされる。消防白書によると、救急車の場合、要請から医療機関への搬送まで平均32分で、20分未満のケースは約17%にとどまった。地震などの災害現場や僻地ではさらに搬送が遅れる。

 これに対し、厚生労働省の研究班が14年度にドクターヘリで搬送された交通事故の負傷者474人を調べたところ、ヘリ要請から治療開始まで平均14分で、救急車に比べ平均27.2分短縮。死亡者は83人いたが、ヘリがなければ、治療の遅れなどから136人に達していたとの推計もある。

 ドクターヘリの普及を阻んできた最大の要因は、民間からのヘリ賃貸料や人件費、燃料費などを含め年間約1億7000万円に上る財政負担。これが特措法施行により、従来の国と都道府県の補助に加え、民間団体が寄付を募って助成金を出すことが可能になった。

 医療関係者は「ヘリを導入した自治体にはなお地域的な偏りがあり、需要が高いと思われる北陸、山陰、四国では導入のめどが立っていない。運航費用の全額国庫負担や患者の一部負担など、全国的な整備に向け、さらなる仕組み作りが必要だ」としている。

50キロ離れた病院でも15分

 「車が近づいてくるのはわかったけど、まだ距離があると思った。そこまでしか覚えていない」

 昨年4月1日夜、道路を横断中に飲酒運転の軽自動車にはねられた千葉県銚子市の建具業、鈴木真悟さん(47)は、ドクターヘリに命を救われた一人だ。

 全身打撲、心臓の大動脈損傷、脳挫傷、肋骨(ろっこつ)骨折…。応急処置後の翌日、ドクターヘリで約50キロ離れた印旛村の日本医科大千葉北総病院に転院。機内では医師2人が血圧の状態などを観察し、車なら2時間の距離を15分で到着した。

 同病院の益子邦洋救命救急センター長は、「大動脈が破裂したら助からなかった。救急車ではカーブや停車で患者の負担が大きい。振動が小さいヘリの特性が生きたケースだ」と話す。

 3日後、約7時間に及ぶ手術に成功。10日後に意識を取り戻して初めて事故を認識したという。心配そうにのぞき込む妻の弘江さん(41)の顔を見て、涙がほおを流れた。

 入院中、ドクターヘリが飛んでいくのをベッドの上から何度も見た。「また誰かが事故に巻き込まれたのかな」。自分の幸運と、ヘリに助けられたことを改めて実感したという。

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