【左側が頭部がなくなった牛馬童子像(19日、和歌山県田辺市中辺路町で)、右側が壊される前の牛馬童子像】 18日午後5時ごろ、田辺市中辺路町近露の熊野古道沿いにある市指定文化財の石像「牛馬童子」の首から上が切断されているのを、通行人の男性が見つけた。切り取られた頭部は見つかっていない。何者かが壊したとみて、田辺署は器物損壊の容疑で捜査している。世界遺産に登録されている熊野古道のシンボルとして親しまれている石像で、関係者は「誰がこんなことを」と落胆している。 現場は、国道311号沿いにある道の駅「熊野古道中辺路」近く。牛馬童子像は頭部を含めた高さが約60センチ、幅約20センチ、長さ約40センチ。童子の頭部約10センチが切り取られている。像のある場所は世界遺産登録地に当たる。 田辺市たきない町の元小学校長堀口誠吾さん(60)と長男の慎太郎さん(18)が18日午後5時ごろ、牛馬童子像を見学しようと立ち寄ったところ、壊れているのを見つけた。 慎太郎さんによると、発見した際、像の前面に石の白い粉が付いており「後ろからもぎ取ったような感じだった」という。誠吾さんと慎太郎さんは中辺路町近露の道の駅の従業員を通じて田辺署や中辺路行政局へ連絡した。 道の駅の従業員によると、18日は団体の利用客が少なく、個人のグループ客が何組か立ち寄った程度だった。同日午後1時ごろ、JA紀南の職員が滝尻王子から近露王子までの熊野古道を歩いた際には、牛馬童子像に異常はなかったという。 誠吾さんは「中辺路町や熊野古道のシンボルなのでとてもショックだ」、慎太郎さんは「初めての牛馬童子見学をとても楽しみにしていたのに残念」と話した。 19日は午前9時前から、田辺市教委文化振興課や中辺路行政局の職員、地元住民、熊野古道の語り部ら約20人が、現場近くの山林で頭部を捜索した。今後の対応策については、県などと協議しながら検討するという。 真砂充敏田辺市長の話 連絡を受け今朝現場を見てきたが、全く残念だ。熊野古道のシンボルがこういうことになるとは、何とも言いようがない。 牛馬童子 史跡名「箸折峠の牛馬童子」。箸折峠の歌仙堂と呼ばれる小丘に建つ、牛馬2頭に童子「花山法皇」がまたがった石像。1891年ごろにつくられたとされる。作者は不明。熊野古道のシンボルとされ観光ポスターやガイドブックでもよく使われ、童子と牛馬のかわいらしい表情や造形が人々に親しまれている。