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発信箱:選挙前にこそ=与良正男

 24日付の本紙朝刊経済面によると、最近の自民党の会合で、社会保障費を抑制する政府方針の撤回を求める議員からこんな声が出たという。

 「医療崩壊は明白。社会保障の行方は我々の政治生命に直結する」

 抑制ばかりが続けば医療が崩壊するという認識は恐らく正しい。ところが、それに直結するのは国民の生命でなく、政治生命。このままでは自分が選挙に落ちるから反対だというのだ。何てあからさまな発言なのかと驚く。

 今、与党内で始まっているのは昔ながらの予算の分捕り合戦。では、その財源はどうするのかと聞けば口をつぐんでしまう。福田康夫首相も社会保障費の財源確保のため、消費税率の引き上げに言及したが、早々と「決断は2~3年で」と軌道修正した。

 与党内では「選挙前に増税を打ち出すなど愚の骨頂」という声が大勢なのである。ここでも理由は「選挙」。公正を期して言えば、まあ、野党も状況は同じようなものだ。

 「難しい話は選挙後に」でなく、「難しい話だからこそ選挙前に」と、なぜ頭を切り替えられないのだろう。本当に社会保障の再構築が必要だと思えば、これだけ無駄を省くから、これだけの負担を国民にお願いしたいときちんと公約に書き込んで国民の信を問う。それがマニフェスト選挙ではないのか。

 「高負担・高福祉」か、「低負担・低福祉」か、別の選択肢を取るのか。まずは日本の行くべき道を堂々と議論することだ。小手先の制度いじりでは、かえって不信を招くということを後期高齢者医療制度で十分学んだはずなのに。

毎日新聞 2008年6月26日 0時08分

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