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計る測る量るスペック調査隊:LANケーブルの仕組みを理解して自作せよ (3/3)


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イーサネットケーブルの作り方

 図4がイーサネットケーブルの製作手順だ。まず、UTPケーブルを必要な長さに切断し(1)、外側の被覆をワイヤストリッパなどではぎ取る(2)。一般的には2〜3センチ程度が適量だ。また、保護ブーツ付きのコネクタを使用する場合はこの時点で保護ブーツにケーブルを通しておく。次に、より線のよりをまっすぐに戻して順番を整え(3)、各導線が一直線にそろうように先端を切断し(4)、コネクタに導線を差し込む(5)。このとき、コネクタの先端まで導線が入っていないと接触不良を起こすので注意しよう。最後にコネクタを圧着工具に差し込み、圧着する(6)。これにより、コネクタ内部の端子先端がケーブルに食い込み、導線と端子が接続される。なお、コネクタの形状によって若干手順が異なる場合もあるが、基本的な作り方は同様だ。

図4 図4 イーサネットケーブルの作り方

ケーブルテスターを使いこなせ!

tnfig10.jpg CableIQによるワイヤーマップ測定(上)とケーブルの適正判別(下)

 「ケーブルとコネクタの結線順を間違えた」「ケーブルとコネクタが接触不良を起こしている」などといった配線ミスは目視による良/不良の判別が難しいため、実際にネットワークを稼働させてはじめてミスに気づく、ということも珍しくない。さらにその場合、どこでどのようなミスが発生しているのか判断しにくいことも多い。そのようなトラブルを未然に防ぐために有効なアイテムがケーブルテスターだ。ケーブルテスターを使用することで、コネクタの端子間が正しく導通しているかを事前にチェックできるほか、テスターによってはスプリットペアの検出や断線位置の大まかな特定も行える。

 例えば、フルーク・ネットワークス製のケーブルテスター「CableIQ」では、コネクタの端子間がどのように接続されているのか(ワイヤーマップ)やケーブルの長さ、さらにケーブルが10/100/1000BASE-Tの各規格に準拠しているかどうかまでも判別できる。ネットワーク構築をする機会が多い方であれば、このようなテスターを1つ持っていても損はないだろう。

 さて、ここまで述べてきたとおり、10/100/1000BASE-Tでは使用するケーブルの規格や長さ、端子の配線などについて、さまざまな制限が規定されている。では、誤って規定外のネットワークを構成してしまった場合、どのような現象が起こってしまうのだろうか? 次回の実験で明らかにする。

コラム より対線によるノイズの軽減

 導線に混入するノイズの原因は、図Aのような、ループ状に接続されたケーブル内の磁界変化だ。つまり、磁界変化が起こらなければノイズは発生しないのである。そのための対策の1つにシールドがある。シールドによるノイズ対策では、磁界変化をシールドと呼ばれる導体で吸収することでノイズ混入を抑えている。一方、より対線では導線をより合わせることで図Bのように逆向きのノイズを発生させ、ノイズを打ち消し合わせることでノイズ対策を行っている。

 また、伝送周波数が高くなると、信号線自体が発する電磁波によりほかの信号線にノイズが混入する、という現象も発生しやすくなる。この現象はクロストーク(漏話)と呼ばれており、特に複数の導線で異なる信号を送る10/100/1000BASE-Tでは大きな問題となる。しかし、導線をペアでより合わせることで、発生する電磁波も打ち消すことができるほか、それぞれのペア間でより合わせる間隔を変えることでそれぞれのペアごとの干渉を弱めるなど、さまざまな工夫によって、カテゴリ6で最大250MHzという、高い伝送周波数を実現しているのである。ただし、より対線による伝送周波数の向上は限界に達しており、現在策定中の規格であるカテゴリ7ではより対線にシールドを行う、といった方法で伝送周波数を高めることが考えられている。

tnfiga.jpg ノイズの発生原因(図A、左)とより対線によるノイズの軽減(図B、右)

本記事は、オープンソースマガジン2006年3月号「計る測る量るスペック調査隊 第5回 LANケーブルのトラブル原因を調べろ!」を再構成したものです。


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