日雇い派遣大手のグッドウィルが25日、廃業を決めたことで、日雇い派遣の規制強化の動きが強まりそうだ。労働者派遣法の改正議論でも日雇い派遣の原則禁止は労使で賛否が対立する。厚生労働省は、7月に有識者会議の報告を受けて日雇い派遣の禁止職種など具体的に検討を開始する。禁止範囲が今後の焦点になりそうだ。(財川典男)
日雇い派遣をめぐっては、民主党など野党は原則禁止を主張。与党も公明党が原則禁止を表明し、自民党と調整している。「7月上旬には与党案が出る」(厚生労働省)見通しだ。政府、与党は、8月下旬に召集される臨時国会中に日雇い派遣の原則禁止を盛り込んだ労働者派遣法改正案の提出を目指す。
ただ、国際会議の通訳など専門的職種以外でもダイレクトメールの封入業務、イベントの販売職、引っ越し作業など仕事の繁閑が1日単位である職種はいろいろある。派遣先企業の経営者は、「日雇い派遣が有効な分野も多い」とし、日雇い派遣を当てにする声もあり、禁止の範囲をめぐって労使の綱引きが激化しそうだ。
日本人材派遣協会は、「安全教育の徹底など見直すべきところはあるが、日雇い派遣が必要な職種があり、労使双方のニーズもある」と主張する。協会は、製造業のライン勤務などで社会保険逃れのために1日単位の細切れで派遣契約を締結することを禁止する自主ルールを策定。違反企業は社名公表というペナルティーを科す。しかし、人材派遣会社は全国に約1万社あり、約800社の協会加盟社だけの自主ルールには限界もある。
日雇い派遣の規制が強化されても、企業はアルバイトの採用を増やしたり、長期間の派遣労働者の受け入れなどで対応するとみられる。規制強化が正社員を増やすことにつながるとはかぎらない。直接雇用の方が雇用責任は明確だが、日雇い派遣が日雇いアルバイトになるのでは「格差社会」の解消にはならない。雇用全体を見据えた政府の支援策強化が求められる。
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