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大航海時代ポルトガルは
海洋国家「琉球」をレキオと呼んだ
「職場の上司から復帰前の沖縄に『日の丸』でも『星条旗』でもない、沖縄の旗があったって聞いたんですけど本当ですか?」(那覇市、20代男性)
という依頼が調査班に寄せられた。沖縄の旗!? 県庁とかにある県章とは違うの?
早速、調査を開始することにした。
青、白、赤に星一つ、幻の沖縄旗のイメージ
復帰前の沖縄はアメリカ世。確かに日本でもないが、単純にアメリカというわけでもない時代だった。
そんな時代に、沖縄だけの旗があってもおかしくなかったはず。
まずは、復帰前の新聞を調べることにした。当時の紙面は読みにくい個所もあるが、そこに時代の流れを感じながらめくっていく。
すると、戦争が終わって五年後、一九五〇年のうるま新報で「沖縄旗、きのう決定」という見出しを発見。
ちなみに「うるま新報」とは戦後初めて発刊された新聞で、今の「琉球新報」の前身だ。
デザイン決定を報じる1950年1月26日付「うるま新報」
もう一つの沖縄旗?
「沖縄旗の選定委員会を五〇年一月二十五日に沖縄民政府会議室で正副知事、沖縄美術家協会員ら列席のもとに開催。会場壁面には同協会員苦心の図柄五点が飾られた。協会側から制作についての説明があり、次いで自由な意見交換会が行われた。その後、横に上から青、白、赤の三色で三等分し、上方の左隅に星一つを白く描いた図柄を全員一致で沖縄旗に決定した」
(一九五〇年一月二十六日付うるま新報から抜粋)
記事によると、図案は沖縄の美しい自然に調和するものとの構想の下に選ばれ、「青は平和」「白は自由」「赤は熱誠」「星は希望」を表しているという。
だが、これで沖縄の旗が決定したと思いきや、そのわずか一カ月後にどんでん返しがあったようだ。
「沖縄民政府は沖縄旗を制定し、米軍政府に正式承認を申請した。しかし、米軍政府は『全琉統一政府が樹立後に国旗の制定は適当だと考える』と、この図案を返還」(五〇年三月二日付うるま新報から抜粋)
結局はその後の沖縄群島政府(五〇年十一月発足)、琉球政府(五二年四月発足)誕生後も受け継がれず、オジャンになったようだ。
それにしても、この沖縄旗ってどこかで見たことが…って、フランス国旗に似てない!?
沖縄民政府がデザインを依頼した美術家協会(西森美術村)の一員でもあった、琉球大学名誉教授の安次富長昭さんに話を聞いた。
「あの三色旗(沖縄旗)をデザインしたのは、わたしの恩師でもある山元恵一先生だったと思います。先生のことだから、おそらく『芸術の都・パリ』に引っ掛けてフランス国旗をまねたんでしょう。芸術家にとって、フランスは自由の国ですからね。山元先生の作品の何点かの中にこの三色旗が描かれていたのを記憶しています」
と安次富さん。三色の沖縄旗には故・山元恵一さんの芸術家としての思いが込められているようだ。
米国立公文書館、アーカイブス興蠡△両芦箸量罎
かたどった「沖縄旗」のデザイン案
(写真提供=我部政明さん)
もう一つの沖縄旗?
調査中、日米関係に詳しい琉球大学教授・我部正明さんの著書「日米関係のなかの沖縄」に面白いものを見つけた。
なんと、それはフランス国旗に似たものとは違い、旧琉球王府の尚家の紋をかたどった旗だった。
同書によると、五〇年十二月に発足した米軍民政府の記録の中に「琉球政府の国旗」と題する文書が残っているという。
先ほどの沖縄旗が新聞紙面に掲載された四年後、五四年七月二十二日付の副民政長官から民政長官あての起案書だ。
米国立公文書館で見つけたというこの起案書では旗をつくることで琉球人としての民族感情を強め、日本とのつながりを弱める作用をもつであろうと指摘。
また、当時沖縄の船舶が海外などへ航行する際、日本国旗、米国旗ともに掲揚できなかったため、代わりのものを|という考えもあったようだ。
実際、復帰までの船舶には、日の丸の上に「琉球」と印した三角の旗が掲げられた。
しかし、沖縄側からの掲揚願いのほとんどが「日の丸」が多かったことや、旗の制定は米民政府ではなく、沖縄の人々の間で生まれるべきものが好ましいという声などがあって、制定を一時棚上げして静観することにしたようだ。
安次富長昭さんに尚家の紋の旗についても聞いてみると、
「一度、山元先生にデザイン案が描かれたメモノートを見せてもらったことがありました。その時にそのような図案も見たような気がしますね」
と教えてくれた。
アメリカ世に琉米双方で考案された二つの「沖縄旗」。しかし、どちらもはためくことなく本土復帰を迎えたのだった。
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