全国に先駆け、二酸化炭素(CO2)排出量の削減を大規模事業所に義務付ける条例が東京都で成立した。罰則も設けられたが、国内のCO2排出を抑えるには、対象も地域も広げなければならない。
「東京から国を動かす」といって石原都政は一九九九年にスタートした。だが、銀行への外形標準課税は裁判で敗れ、横田基地の返還交渉は進まず、新銀行東京は経営難と、知事の肝いり政策でつまずきが目立つ。
そのなかで環境対策は一定の評価ができよう。ディーゼル車の排ガス規制を積極的に取り組み、東京大気汚染訴訟では都知事が医療費助成制度の創設を提唱したことが和解への転機になった。
二十五日に成立した「改正環境確保条例」も先駆的な施策だ。全国へのモデルとなりうるし、CO2削減に具体策を示せないままの国を促す効果も期待できる。
条例は二〇一〇年度から約千三百の大規模事業所に排出削減を義務化し、目標を達成できない事業所には罰金を科す。達成手段として排出量取引制度も導入した。
取引制度は、目標を達成できない事業所が、目標以上に削減できた事業所から不足分を買い取る仕組みだ。基本は事業所ごとの努力だから、補完的にとどめたい。
都は二〇年までに二〇〇〇年比で25%のCO2を都全体で削減する目標という。事業所ごとの削減率は専門家らによる検討会の議論を経て本年度中に決める。その削減率の設定が次の大きな課題だ。
国レベルで対策が進まない要因の一つに経済界の抵抗がある。条例制定をめぐっても日本経済団体連合会などから反対意見が出た。事業所ごとの削減率設定でも難航は予想される。
都は、これまで積極的に削減してきたと認められる事業所には緩和措置を取るという。メリハリをつけることはいいが、全体で低い設定になっては条例が空文化してしまう。全体目標が達成できるだけの削減率を定めるべきだ。
対象となっている事業所で都内の排出量全体の約二割を占める。電気や燃料、熱の使用量が多い企業や大学など「消費者」が主で、火力発電所は含まれていない。今後、中小企業を含め、対象外の事業所をどう取り込んでいくかも課題の一つといえる。
CO2対策は本来、自治体単位の問題ではない。福田ビジョンが示されたが、具体的な動きはまだ見えない。今度は国が踏み込んだ対策を打つ番だ。
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