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NIKKEI NET

社説1 コンビニ深夜規制より大切な事がある(6/26)

 地方自治体の間でコンビニエンスストアの深夜営業を規制しようとする動きが広まりつつある。省エネや二酸化炭素(CO2)の排出量削減が主な狙いだ。これに対しコンビニ側は省エネ効果の乏しさなどを挙げ反対の姿勢を示している。CO2削減は重要だ。ただし深夜営業休止は象徴的な意味があるとしても問題解決にはならないだろう。各自治体はいったん立ち止まり、何が真に必要か冷静に考えるべきではないか。

 これまで神奈川県、埼玉県、京都市などの首長がコンビニ深夜営業の規制に意欲を示している。京都市は2009年度にも深夜営業をやめさせる方針という。夜型ライフスタイルを改める契機にすると主張する。

 これに対しコンビニなどが加盟する日本フランチャイズチェーン協会が反論している。仮に朝7時から夜11時までの16時間営業に変更しても冷蔵庫は稼働し続ける。さらに深夜の配送を道路が込む昼間に移すため物流でのエネルギー消費が増え、差し引きの二酸化炭素削減は4%程度にとどまるとしている。

 経済のサービス化で夜間に働く人は増えている。コンビニ、スーパーやレストランが営業時間を広げたのは生活者の要望にこたえた結果であり、逆ではない。07年度に女性が身の危険を感じコンビニに駆け込んだ例が1万3000件あり、その半数は深夜だった。公共料金の支払いや宅配便まで含め、コンビニは生活に不可欠なインフラになっている。

 こうした利便性を捨てさせるほどの効果が深夜閉店にあるか、自治体は慎重に判断すべきだ。1970年代の石油危機で、やはり省エネ効果の薄いネオンサインが標的になり繁華街の明かりが消えた。コンビニ閉店の影響はネオンの比ではない。深夜規制ばかりが注目され、CO2削減に向けた本筋の取り組みがおろそかになるようでも困る。仮に温暖化対策を口実に小売店間の競争を制限することになるとすれば論外だ。

 流通業界も一層の努力がいる。かつて多頻度小口配送が渋滞などを引き起こすと指摘されたのに対しては異なるメーカーの商品を一括配送するなどの仕組みで応えた。セブンイレブンでは創業のころ1つの店に1日70台の配送車が来ていたが、いまでは先進的な地区では1日8台に減らした。需要予測の精度を高め無駄な発注や廃棄物を減らす、省エネ効果の高い店舗機材を開発するなど工夫の余地は大きい。こうしたノウハウは今後の海外展開にも役立つ。環境対策は縮み志向ではなく、競争力を向上させる方向で考えたい。

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