きっとトレードマークのうさぎも怒っていることだろう。業界最大手の英会話学校NOVAの経営破たんは、ついに刑事事件に発展した。
大阪府警は、業務上横領容疑で猿橋望元社長を逮捕した。昨年七月、経理担当者に指示して福利厚生のため社員が積み立てていた三億二千万円を受講生に対する解約返還金に流用した疑いが持たれている。
当時、経済産業省から一部業務停止命令を受け、解約が急増したことが背景にある。元社長は積立金を返還金に充てた事実は認めた上で「私的に流用したことはない」とのコメントを発表した。
「イエスマンしか登用しない」「秘書も所在を知らない」。周囲の証言からは、元社長のワンマン経営ぶりが透けてみえる。会社は私物化されていなかったのか。不透明な資金の流れの徹底解明が待たれる。
元社長は、安い受講料と主要駅周辺に教室を置く「駅前留学」や、テレビ電話を使って自宅で講師と会話できる「お茶の間留学」を売り物に会社を急成長させた。ピーク時には、受講生四十八万人、教室数は千室を超えた。
しかし、経営破たんで三十万人にも上る受講者に被害を与えておきながら、半年以上も雲隠れしたままで、謝罪や説明責任を果たさなかった。無責任な態度にも被害者は怒りが募ろう。