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2008年6月26日

◎一般競争入札の拡大 県も実施時期を明示しては

 談合防止へ向け、二十四道府県が一般競争入札の対象工事を予定価格一千万円以上に広 げる中、石川県は三千万円以上、富山県は二千万円以上と取り組みの遅れが目立ってきたのは残念である。

 全国で知事が関与した官製談合事件が相次ぎ、それを深刻に受け止めた全国知事会が共 通目標として掲げたのが一般競争入札の一千万円以上への拡大である。入札改革の指針をまとめた二〇〇六年十二月の知事会緊急報告では一連の不祥事について「地方全体の統治能力、自浄能力、そして知事一人ひとりの資質が問われているといっても過言ではない」と危機感を前面に出し、談合と決別する断固たる取り組みを誓ったはずだ。

 すでに知事会の目標を超え、一般競争入札を二百五十万円超に拡大した自治体も十一府 県ある。緊急報告から一年半が過ぎ、都道府県の進捗状況に大きな差が生じたのはどうしたことか。石川、富山県も他の自治体に追いつくために一千万円以上に拡大する時期を早く明示してもらいたい。

 石川県は一般競争入札の対象を昨年四月に五千万円以上、十月から三千万円以上にした 。富山県も昨年四月に五千万円以上、十月には二千万円以上に改めた。拡大効果を検証するため、段階的に実施するのは分からなくもないが、慎重になり過ぎると県の改革意欲が問われかねない。他県では対象工事を思い切って拡大することで談合を許さないという発注者側の強い意思を示している。それに比べれば、石川、富山県の取り組みはやはり物足りなさを感じる。

 両県は入札制度改革として、価格以外の要素も加味する総合評価方式を増やしたり、電 子入札の拡大、談合が発覚した場合の違約金引き上げなどを実施しているが、一般競争入札の拡大が談合防止に最も有効な手段であるのは、拡大後に落札率が下がった調査結果からも明らかである。

 石川、富山県内でも談合事件や談合情報は後を絶たない。発注工事の規模も件数も多い 県が率先して入札改革を進めてこそ市町村の範となり、県全域に談合を排除する機運も高まるだろう。

◎安保懇報告書 議論にふたをしないで

 安倍政権時代に設置された「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」がようやく 最終報告書をまとめ、福田康夫首相に提出した。いまの福田首相に、安保懇が提言する集団的自衛権の行使容認に踏み出す意思はなく、報告書は「お蔵入り」になりそうな気配であるが、集団的自衛権に関する議論にまで、ふたをかぶせてはなるまい。

 安保懇の報告書は「公海で共同活動をする自衛隊が米艦船を防御する場合」などで集団 的自衛権の行使は可能と結論づけた。安全保障に関する国際社会の常識に照らせば当たり前と言えるが、福田首相は集団的自衛権に関する憲法解釈の見直しを即座に否定した。

 日米同盟とアジア外交の共鳴を外交方針に掲げる福田首相にすれば、米国との同盟関係 を決定的に固める集団的自衛権行使の議論は、関係改善に力を入れる対中国外交にマイナスであり、いま政治の表舞台に乗せる必要性に乏しいとの認識かもしれない。

 しかし、集団的自衛権は保有するが行使できないという国際常識からかけ離れた憲法解 釈のまま、安全保障環境の変化と危機に対応できるだろうか。国と国民の安全にかかわる根本問題から目をそらすわけにはいかない。

 報告書は、米国に向かうかもしれないミサイルに対し、迎撃能力のある日本が何もしな かったら、日米同盟は根幹から揺らぐと指摘している。米国民は、集団的自衛権の対応ぶりから、日米同盟に対する日本の覚悟のほどを測っていると認識する必要もあろう。

 安保懇は集団的自衛権の行使容認のほかにも重要な提言を行っている。たとえば、自衛 隊がPKO活動などを行う場合における現行の武器使用基準は常識に反し、国際社会の非難の対象になり得るとの指摘はもっともと言える。武器使用基準の緩和は、福田首相のいう「平和協力国家」の責任を果たしていく上で避けて通れない問題である。安保懇報告書を前政権の「遺物」などといって葬り去るようなことをせず、現実対応が必要かつ可能なところから国会の場で議論を進めてもらいたい。


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