39階建てマンションができる前、原告の住民宅からの景色=04年1月、原告住民撮影39階建てマンションができた後の景色=06年3月、原告住民撮影
眺望を売りにしたタワーマンションの目の前に同じ業者がさらに高いマンションを建てて景色が変わったとして、住民が慰謝料支払いを求めた裁判の判決が25日、大阪地裁であった。高木勝己裁判官は「大都市・大阪の中心部で、たまたま住民が良好な眺望を独占的に享受していたとしても、法的保護には値しない」と判断。1人あたり750万円の請求を棄却した。
原告は、00〜01年に大阪・難波の28階建てマンションの高層階を購入した住民5人。このマンションに続き、その東約80メートル先に05年、39階建てマンションを建てて販売した近鉄不動産(大阪市)と近畿日本鉄道(同)を訴えた。
住民らは販売時のパンフレットが「朝日を浴びる東面、生駒山を間近に望む眺望」と強調していたことを挙げ、「2棟目の計画について適切な説明がなかった」と主張した。しかし、判決は「良好な眺望をセールスポイントにすることはマンション販売では通常のこと」と指摘。さらに「1棟目の販売時に2棟目の計画が確定していたとは言えない」と認定した。一方で、1棟目の販売当時、街並みの完成予想図の看板が近くに設置され、この図の中でマンション東側に高層の建物が描かれていたことに言及。「原告は高層の建物が建つ可能性を認識できた」と述べた。
住民らは契約書の「周辺環境が変化しても異議を述べない」という文言について「売り主自身が変化させる場合は含まれず、あくまでも第三者による場合が対象だ」と訴えた。だが、判決は「周辺環境変化の要因は第三者に限定されていない」として退けた。
住民の一人は判決の後「思いが全く伝わらなかった。納得できない」と語った。近鉄不動産の担当者は「今後とも顧客の信頼に応えるよう努力したい」と話した。(宮崎園子)