大戸川ダム(大津市)や丹生ダム(余呉町)などの建設を盛り込み、国交省近畿地方整備局が20日、発表した河川整備計画案。ダムに慎重な嘉田由紀子知事は同局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が求める原案の再提示に同調し、計画案に同委の意見を反映することを強く迫ってきただけに「残念だ」と表明した。一方、長年ダム建設を待ち望む地元自治体の首長らは歓迎の緊急声明を発表した。【服部正法、近藤希実】
嘉田知事は同日、県庁で報道陣の取材に応じ、「97年に河川法の目的に環境保全、住民の意見聴取のプロセスが入った。今回の案がどこまでフォローできているか疑問に思う」と批判。「治水の代替案やダムの有効性について、3府県知事で考えたい。上下流一体の総合的な政策に責任を持つ知事として、3府県で河川政策を詰めたい」と語った。
これまで嘉田知事は「流域委の意見反映のない計画案では県民や議会に説明しにくい」と述べてきたが、この日は「市町に意見照会はするが、流域委の意見が案に反映されているか聴いたうえ、議会や県民に説明する」と慎重な姿勢を示した。
関係市町はダム推進が多く、国に出す「知事意見」には県議会の議決が必要。嘉田知事は京都、大阪両知事の動向をにらみながら「知事のアイデンティティーの部分」(支持者)で、正念場を迎えたと言える。
計画案発表を受け、丹生ダムの下流域の自治体などで作る「高時川治水対策促進協議会」の長浜市や高月、余呉、虎姫町など6市町の首長らが県庁で記者会見し、歓迎する声明を発表。改めて嘉田知事にダムの早期建設と河川整備を要望した。
会長の北村又郎・高月町長は「住民の命と安全を守る義務があるのは知事も我々も同じ。共通の意識を持てるよう訴えていきたい」と主張。同ダムを姉川・高時川流域の治水や渇水対策に使える「貯水型ダム」として建設するよう要望した。
毎日新聞 2008年6月21日 地方版