「首長族」として知られる東南アジアの少数民族が、観光客からの見物料として現金収入を得るために、山間部から都市部へと移住を始めています。新たな観光スポットとなったバンコク近郊の集落で、「首長族」の厳しい現状を取材しました。
首に何重もの金属製のコイルを巻く風習で知られるパドン族、通称「首長族」。元はタイの隣国ミャンマーの山間部に住む少数民族ですが、ミャンマー軍事政権の迫害を受け、多くが20年ほど前にタイ北部の山岳地帯に流れ込みました。
ここに住む「首長族」の人たちは、見物客がこの集落に来る時に支払う入場料、そして民芸品を販売することによる収益金で生計を立てています。土地を持たず、言葉も違う「首長族」が異国の地で生活する術は限られていて、自らを見世物にして観光客から見物料を手にすることが、次第に生活の手段となっていきました。
「以前は農家で働いていましたが、もっとお金が必要になり、この仕事を始めました」「最初は見られることが恥ずかしかったけれど、今はもう慣れました」
さらに多くの見物客を求めて、ここバンコク近郊にまで移り住み始めた「首長族」。国内外から多い日はあわせて1000人の見物客が訪れるということです。
民族そのものが見世物になることに対しては、有識者などから「動物園と同じだ」との批判が出ていますが、元締めの男性は、「生活のためにやむを得ないこと」と反論します。
「我々はチャンスを与えているのです。彼女たちはここで働くことで、より豊かになり、故郷に仕送りまでできるのです」(集落の管理者)
重さ5キロから10キロもあるという首の輪は、伝統を守るためだけではなく、欠くことのできない生活の糧として今も残り続けています。(25日09:35)