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ニッポンの底力

電池が軽い・薄い・曲げられる!
期待の「太陽電池」が量産化

富士電機システムズの高野章弘氏

 従来の太陽電池はガラス板を基板にした製品が主流だったが、同社はプラスチックフィルムを基板に用いることで、薄くて軽量で、曲げられるフィルム型太陽電池の開発に成功した。これにより、太陽光発電装置の設置場所が格段に広がる。さらに製造法に関しても、カメラのフィルム巻き取り機構のように、材料のフィルムをロールから引き出し、シリコン層を製膜し、ロールに巻き取るという「ステッピングロール方式」のプロセスを開発した。小規模な工場でも低コストで大量生産が可能になり、大幅なコストダウンが期待できる。太陽光発電システムは無尽蔵な太陽エネルギーを利用し、二酸化炭素を排出しないので、温暖化防止の切り札として期待されている。その普及を加速させる画期的な技術である。

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【会社概要】

高野章弘氏

高野章弘氏 (40歳)
Akihiro Takano
制御システム本部
太陽電池統括部
熊本工場 開発部次長

富士電機システムズ
東京都品川区
(熊本工場:熊本県南関町)

設立
1923年8月
資本金
250億円
従業員数
5149名(2007年3月現在)
ワンポイント
制御、環境、電機、発電の4事業を柱とする研究開発型のメーカー

【その他の受賞メンバー(五十音順)】
清藤真次、坂井亮平、榊原康史、下沢慎、反田真之、塚原祐二、中原浩介、布野秀和、横山康弘


重くて厚いガラスから軽くて薄いプラスチックへ

 太陽光発電システムは、二酸化炭素を排出する火力発電や、危険な放射性物質が出る原子力発電と異なり、無尽蔵な太陽エネルギーを利用し、何も排出しない極めてクリーンな発電システムである。その特性から、地球温暖化防止と省資源を実現する切り札のひとつとして、期待されてきた。近年、太陽電池の市場は急速に伸び始めているとはいえ、もともとのパイが小さいので普及率はまだ決して高くはない。

 「太陽電池の普及を阻んできたのは高価格であることが原因。また、ガラス基板の製品は重量が重いこともネックになっています」

 一般家庭用の太陽光発電システムは最低でも200万円以上かかり、発電(売電)でもとを取るのに10〜20年かかるのが普通である。そこで富士電機システムズでは、10年以上前から重いガラス基板ではなく、軽いプラスチックのフィルムを基板に使う研究に取り組んできた。94年に開発チームのリーダーに抜擢されたのは、当時、大学院の博士課程を修了したばかりで27歳だった高野さんだった。

保護層が張られていない出荷前の製品。太陽電池層には、地球上に無尽蔵に存在する安価なアモルファス(非結晶)シリコンが使われている

保護層が張られていない出荷前の製品。太陽電池層には、地球上に無尽蔵に存在する安価なアモルファス(非結晶)シリコンが使われている


 「その当時、弊社にはガラスを基板として扱うノウハウはいくらでもありましたが、プラスチックフィルムを扱った経験はまったくなく、ゼロからのスタートでした。ガラスと違ってプラスチックは熱に弱いが、太陽電池のシリコン層をフィルム上に製膜するには温度を300℃まで上げる必要がある。温度変化で伸び縮みするので、しわができたりシリコン層がはがれたりして、一筋縄でいくものではなかったのです」

 開発チームに与えられたテーマは、プラスチックフィルム基板の太陽電池開発だけではない。同時に低コストの製造方法も求められた。材料として納品されたフィルムのロールをセットしたら、そこからフィルムを引き出してシリコン層を製膜し、電極を張り付け、またロールに巻き取って製品として出荷する。カメラのフィルムのコマ送りのような機構で、可能な限りプロセスを減らし、製造コストを下げる必要もあった。

 「どこがブレークスルーだったかと問われると、答えるのは難しい。プラスチックフィルムの扱い方について、十数年かかってトライ&エラーを繰り返し、そこから得られた多数のノウハウを集積させたと言うほかないのです」

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