パレスチナがイスラム原理主義組織ハマスのガザ制圧で分裂してから一年。ハマスはイスラエルと停戦合意したが、最終ゴールを独立とする以上、自治政府側との和解、再統合が急務だ。
ガザ地区で最近、異臭と目の痛みを訴える人々が多い。イスラエルによる経済封鎖でガソリンの搬入量が四分の一に激減。代わりに調理用油で走行する車が増えているからだ。
家庭では一日八時間の停電が日常化し、工場の九割がセメントなどの建材が入らず、閉鎖に追い込まれているという。
こうした住民の困窮は、総選挙で選ばれたハマス政権がイスラエルを承認しないとして、欧米が経済支援を打ち切った上、エジプトとの国境検問所閉鎖が追い打ちをかけたためだ。今年一月には境界壁を爆破し、物資を求めて住民が越境する事件も起きた。
ガザとヨルダン川西岸との分裂以降、イスラエルとの和平交渉はアッバス自治政府議長が仕切ってきたが、成果は上がらず、世論調査ではハマスの支持が上回る。
分裂状態を懸念し、和解を仲介する動きも加速した。三月にはイエメン政府が両組織の代表を招いて和解協議の開始を合意させ、今月六日にはセネガルで協議が行われたと伝えられる。
さらにエジプトの仲介による交渉で、ハマスがイスラエルと停戦で初合意し、発効した。
これらの流れを確かなものにするにはどうすればよいか。パレスチナ側は双方がまず和解し、再統合の道を探ることだ。身内で争っていては、原点であるパレスチナ独立は夢のまた夢だ。ハマスもこれを機に、武装闘争路線に決別すべきではないか。
イスラエル側は信頼醸成のためにも、まずガザ封鎖を解き、続けて占領地への入植を即時凍結し、人種隔離ともなる分離壁の建設を中止すべきである。
米国には、公平な行司役を期待したい。米国内には六百万のユダヤ人票があり、秋の大統領選をにらんで共和、民主両党ともイスラエル寄りになりがちだ。先の中東歴訪で軽率なイスラエル支持発言を批判されたブッシュ米大統領だが、残るわずかな任期中に歴史的和平案を提示するくらいの決断があっていい。
イスラエルにパレスチナ全土が占領された第三次中東戦争から四十年余。当事者の和平努力には限界がある。日本としても国際社会の後押しに積極的に貢献したい。
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