音声ブラウザ専用。こちらより記事見出しへ移動可能です。クリック。

音声ブラウザ専用。こちらより検索フォームへ移動可能です。クリック。

NIKKEI NET

社説2 携帯市場変える「iPhone」(6/25)

 米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)3G」が7月11日、22カ国で発売される。携帯音楽プレーヤーの「iPod」に通話機能を持たせ、音楽や映像、ゲームなど幅広い用途に使える。日本ではソフトバンクモバイルが売り出すが、通信会社主導の携帯市場を変えるきっかけとなりそうだ。

 新しい端末は第三世代携帯電話(3G)規格に対応、通信速度が向上し、世界中どこでも使える。初代モデルは海外で600万台以上売られ、日本でも端末の買い替えや携帯番号継続制度(MNP)による通信会社の乗り換えが進むとみられる。

 アップルの参入は様々な点で興味深い。日本では通信会社が端末の仕様を決めるが、今回はメーカーが仕様を決め、しかも通信会社ごとの製品ではなく、同じ製品を世界で販売する。インターネットにも通信会社のサイト経由でなく接続でき、パソコンと同じ情報を閲覧しやすい。

 構造も携帯電話というよりはパソコンやゲーム機に近い。アップルの基本ソフトを搭載し、第三者が自由に応用ソフトを開発できる。指でなぞるタッチパネルや、本体を傾けて操作する加速度センサーを搭載し、任天堂の「DS」や「Wii」と似たような感覚で使える。

 実は日本での販売権はNTTドコモも狙っていた。ソフトバンクが先を越したのは「我々のほうがネットに熱心だったから」と孫正義社長は言う。「iモード」で成功したドコモは、端末からサービス、コンテンツまで囲い込んだが、そうした垂直統合型のビジネスモデルがアップルと相いれなかったようだ。

 そういうアップルも垂直統合型モデルだが、異なるのはネット対応と世界戦略だ。日本の携帯産業は技術力に慢心し、特殊な生態系が残るガラパゴス諸島のような閉鎖市場を形成してしまった。携帯音楽プレーヤーでもネット対応を見誤り、iPodに市場を奪われてしまった。

 iPhoneの登場に対し、ドコモやKDDI(au)も米グーグルと組んでネット対応に力を入れ始めた。しかし携帯市場が世界共通になれば、日本企業もおのずと外国との競争を強いられる。そこでどう競争力を維持するかが問われている。

社説・春秋記事一覧