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NIKKEI NET

社説1 資源高に揺さぶられるアジアの株安(6/25)

 アジアの主要市場で株価が下がっている。特に目立つのは中国やインドなどダイナミックな成長を続けている新興国の株安。米国の景気減速に加え、国際的な資源・エネルギー価格の高騰が響いている。

 インドの代表的な株価指標であるSENSEXは24日、今年になってからの最安値で取引を終えた。1月初めにつけた過去最高値と比べると下落率は3割を超える。

 最大の原因はインフレだ。指標となっている卸売物価上昇率は今月初め、年11.05%と13年ぶりの高い水準となった。中央銀行であるインド準備銀行は11日、ほぼ1年3カ月ぶりに政策金利を引き上げてインフレ抑制姿勢を鮮明にした。株式市場では「一層の金融引き締めが必要」との見方が強く、株価の足を引っぱっている。

 チダムバラム財務相はインフレの根底には原油高があると指摘した。原油高は経常赤字拡大の一因でもある。サブプライムローン問題を震源とする米景気減速で輸出の伸びが鈍る懸念もあり、通貨ルピーは米ドルに対し下がり続けている。それがインフレ圧力をさらに高めている。

 ベトナムの株安は一層急激で、VN指数は年初から6割も下がっている。年率25%を超えたインフレも経常赤字もインドより深刻で、通貨ドンの相場は急落している。中国の上海総合指数は2007年10月の過去最高値に比べ5割以上安い。経常収支の状況はインドやベトナムと異なるが、やはりインフレ抑制をめざす金融引き締めが株安の主因だ。

 今のところ各国の実体経済はなお底堅い。インドやベトナムから投機的な資金は姿を消したが、直接投資は増加基調をたもっている。輸出と生産が拡大しているうえ、資源高と並行した食料価格の高騰は農民の収入増をもたらしている。

 アジアの主要市場は05年から07年にかけ過熱気味だったので、適度な調整は望ましい面もある。ただインドで新規株式公開(IPO)の勢いが鈍るなど、株安が企業の資金調達に影響し始めた。さらに下がるか、実体経済にどう波及するか、目をこらしていく必要がある。

 「高水準のエネルギー価格は一時的ではないかもしれない」。インド準備銀行のレディ総裁は23日、資源高という「新しい現実」に適応しなければならないと訴えた。最近の資源高は投機が主導しているが、アジアの高成長が実需面の裏付けとなってきた。エネルギーの使用効率や生産性の向上など、アジア自らの努力を株安は迫っている。

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