原油高対策を協議する「産油国・消費国閣僚会合」がサウジアラビアで緊急開催され、投機資金の監視強化など金融市場の透明性向上と規制などを盛り込んだ共同声明を採択した。
サウジは原油の生産能力を将来的には現在の約一・五倍の日量千五百万バレル規模に引き上げる用意があると表明した。ただ、これで原油高騰に歯止めがかかるかどうかは、なお不透明と言わざるを得ない。
会合に参加したのは、石油輸出国機構(OPEC)加盟国、欧米、日本など三十六カ国である。原油価格が一時一バレル=一四〇ドルに迫り、世界的にインフレ懸念が強まってきたのを受け、サウジが呼びかけた。世界最大の産油国が国際会議を緊急招集したのは極めて異例だ。
サウジのヌアイミ石油鉱物資源相は、二〇〇九年末までに原油生産能力を日量千二百五十万バレル規模に増強、需要があればさらに二百五十万バレル追加する意向を明らかにした。
長期的に原油供給に支障がないことをアピールし、価格の沈静化を図る狙いがあった。相場高騰により消費国が「脱石油」の動きを強め、中長期的に石油需要が冷え込む懸念もあったのだろう。OPEC盟主として消費国との信頼を重視する方針に踏み出さざるを得なかった事情が透けて見える。
しかし、サウジ以外に増産や生産能力増強を打ち出した国はなく、足並みの乱れを印象づけた。産油国には「原油の供給は十分であり、価格の高騰は市場に流れ込む投機資金が主因」との冷めた見方が多いためだ。サウジの増産方針について市場関係者からは「予想通りで、原油高を冷やすほどではない」と厳しい見方も出ている。
共同声明は、原油価格の高騰や急激な価格変動が「世界経済に有害」との懸念を明記し、価格安定のためには産油国と消費国の連携が必要とした。
具体策としては、商品ファンド動向のデータ把握や石油市場に関する情報交換の強化、国際エネルギー機関(IEA)とOPECが市場の調査・分析を実施することなどを挙げた。
声明は「規制」という表現で投機資金の監視にも強い姿勢を示したが、その具体的な内容には触れていない。投機筋への規制強化には米国などの反発も強く、実効性が上がるかどうかは見通せない。年内にロンドンで開く次回会合でさらに議論を深める見通しだ。
産油国、消費国は、客観的な分析をもとに共通認識を深め、原油高沈静化に向け協調を図るべきである。
プロ野球の新コミッショナーに前駐米大使の加藤良三氏の就任が、日本プロ野球組織(NPB)の十二球団オーナー会議で承認され正式に決まった。任期は七月一日から三年間で、昨年二月から続いていた球界トップの不在はやっと解消される。
加藤氏は、二〇〇一年十月から今年五月まで六年半、駐米大使を務めた。少年時代からの野球ファンで、米大リーグで始球式を何度も行っている。外務官僚として培った交渉能力に加えて、米国野球に精通している点など、人物、能力の点でも申し分はなかろう。
プロ野球改革は急務だ。加藤氏の責任は重大である。ポスティングシステム(入札制度)で有力選手が米大リーグへ流出し空洞化が進む。資金力の差による戦力の偏りも大きくなっている。サッカーなど他のプロスポーツの普及で、野球人気は長期低落傾向にある。
四年前には近鉄とオリックスの合併に伴う球界再編の動きが持ち上がって、球界初のストライキまで行われた。コミッショナーの反応の鈍さがファンにはもどかしく映ったはずだ。これは野球協約にコミッショナーの権限が明確に規定されていないことが一因だった。
このため根来泰周コミッショナー代行は、今年十月発効を目指し野球協約の改定作業を進めてきた。新協約では、球団代表で構成される最高議決機関の実行委員会がコミッショナーの傘下となり、コミッショナーの権限が大幅に強化される。加藤氏は大いにリーダーシップを発揮してほしい。
ただし十二球団の利害はそれぞれ異なっているため、新協約について細部では足並みがそろっていない。球界発展のために一致して、新コミッショナーを盛り立てることも重要だろう。
(2008年6月24日掲載)