悪意に満ちたいたずらに、北陸も無縁ではなくなった。特急「雷鳥」に爆弾を仕掛けたという1本の電話が、北陸線の列車を次々と止めた。事の重大さをわきまえぬ愚か者が近くにいる 秋葉原の事件の後、ネットの掲示板での「犯行予告」が後を絶たない。既に逮捕者は12人。警察庁は取り締まり強化と一般からの通報が増えた結果とするが、それでも摘発は氷山の一角のようにも思える 凶悪事件は、2度と悲劇を繰り返さぬという多くの願いの一方で、愚かな便乗犯のたぐいを生む。悪の連鎖に対する社会のブレーキは、いつの間にこんなに衰えたのだろう いま、北陸線の車内では耳障りな放送が流れる。犯罪行為を目撃したらすぐ連絡を、というお願いが繰り返される。2年前に北陸線の特急で女性が乱暴された。大勢の乗客がいたが、男に脅されて誰も制止や通報をしなかった。あのいやな事件のせいである 事件があった以上、警告の放送は致し方ない。が、「巻き添えを恐れて、見て見ぬふりはいけませんよ」と諭されるたびに、味気なさが交じる。駅には通り魔。旅もせちがらくなった。
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