道頓堀川沿いの土産物店で売られている「たこ焼き風ラムネ」=大阪市中央区、三島写す「たこ焼き風ラムネ」唐辛子入りの「キムチ風ラムネ」ご当地ラムネの元祖「わさびらむね」赤シソ味の鍛高ラムネ
カラコロと鳴るビー玉の音色と、のどにしみる炭酸の刺激。郷愁を誘う夏の味ラムネが「まちおこし」商品としてよみがえっている。中小メーカーが「たこ焼き味」「キムチ味」「シソ味」などのご当地名物の風味で売り出したところ、懐かしさと遊び心の組み合わせが受け、予想を上回る売れ行きだ。
大阪・ミナミ。道頓堀川沿いの遊歩道にある土産物店「成安」の店頭には「たこ焼き風ラムネ」(120円)が並ぶ。
1946年の創業で、全国シェアの半分近くを占める業界最大手のハタ鉱泉(大阪市都島区)が今春売り出した商品。売り物はビー玉を落として開けた瞬間の香り。プーンとソースの香りをさせてたこ焼きの感じを出しつつ、飲めばラムネの味がする。
友達5人で回し飲みした大阪市の和田弘子さん(25)らは「おいしい」「まずい」と賛否両論。京都市の鈴木義之さん(26)は「ソースの酸味が効いていて悪くない。お土産で人にあげたい感じ」。この土産物店では10〜20代の観光客を中心に、多い日は100本以上売れるという。
2代目の秦啓員(ひろかず)社長(54)が「大阪発のにぎやかしになったらありがたい」と遊び心で売り出したところ、2カ月で約25万本を出荷。年5万本と見ていた予想を大きく上回った。4月には、唐辛子入りでニンニクの香りをさせた赤色の「キムチ味」を発売。いまは大阪・泉州の「水ナス味」に挑戦中で、「そのまま搾っただけでは色がまずそう。ナスっぽい味と色を求めて試行錯誤しています」。
ご当地ラムネの元祖は、静岡県島田市の木村飲料が2年前に売り出した静岡名産の「わさびらむね」。当初、売れ行きは思わしくなかった。ところが、木村英文社長(52)が昨年3月、反対する社員を押し切って大好物の「カレーラムネ」を売り出したところ、同社で最大のヒット商品になった。
名産のシソで町おこしを進める北海道白糠町も昨年「青シソ」「赤シソ」のラムネを開発したほか、北海道のイカスミや夕張メロン、栃木県のブルーベリーなど少なくとも7社がご当地ラムネを商品化。インターネット通販にも乗ってヒット商品が生まれている。
中小企業63社が加盟する全国ラムネ協会(東京)によると、ラムネは「レモネード」がなまったもので、幕末にペリーが日本に伝えたとされる。国内の発祥地には諸説あるが、神戸、長崎、横浜などで製造が始まり、終戦後まもなくは全国で1千〜2千社が製造していたが、大企業の炭酸飲料や缶コーヒー、ミネラルウオーターなどに押されて現在は100社ほど。
同協会の久保田潔さんは、ビー玉や夏祭りと結びついたラムネの楽しいイメージが、独自商品の人気を後押ししているとみる。「単なるたこ焼きドリンクやカレージュースでは売れないでしょう。100年以上かけて浸透した『ラムネ』とのマッチングだからこそ、お客さんにうまくアピールして『飲んでみよう』となる。まだまだヒット商品が生まれる可能性があります」と話している。(三島庸孝)