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最優秀工場派遣労働の闇

2008年6月24日

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 先般の秋葉原での事件には日本経済の基底に潜む危うさを強く感じる。容疑者のプロフィルを見ると日本経済社会が持っている問題点が出そろっている。北東北での生い立ち、高学歴社会での挫折、不安定な派遣労働者。個々には決して珍しくない、ありふれたものばかりであるが、これらがある人格とであったとき、大きな破壊力を持ったことに、恐ろしさを感じる。

 特に、世界のトップランナーを自負する日本自動車産業の現場派遣労働者としての過酷な経験がこの事件のきっかけとなっていたことに注目したい。彼が勤務していた会社は東北地方にも量産工場を持ち、そこはアメリカの調査会社から「世界のベスト工場賞」を与えられたことがある。彼の勤務先も優秀な工場に違いない。そこでの厳しい勤務とリストラなどの不安が事件の引き金になった。

 世界自動車各社が注目し見習おうとする日本の「リーン・プロダクション・システム」はもろい基盤の上に立っているのではないか。私は日本の工場を見学して、その秩序と緊張感は素晴らしいと思っていた。欧米企業の工場では、作業者が見学者に対して視線を投げかけることもあり、コンベヤーも心持ちゆったりと動いて生産性では勝負がついたと思っていた。しかしその秩序と緊張感の裏にはもっと恐ろしいものがうごめいていた。

 派遣労働者に支えられ、働くことで一部とは言え精神的なダメージを与える工場が本当に世界に誇れるのか。政府はこの事件をきっかけに凶器の規制問題ばかり口にするが、経済成長を目指し、かつ生活者を大事にする政府であるならばなおのこと、製造現場の精神の荒廃をむしろきちんと調査すべきであろう。(龍)

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