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NIKKEI NET

社説1 産油国も米中もさらに対応が必要だ(6/24)

 サウジアラビアで開いた主要産油国と消費国の緊急閣僚会合は、原油価格急騰への懸念を共有し、協調行動が必要だとする共同声明を発表した。声明は追加供給余力を持つことが石油市場安定に重要との認識を示し、過度な相場変動を抑えるために金融市場の透明性を高め、規則を改善する必要があるとも指摘した。

 原油やガソリンなどの高騰は、中国をはじめとする新興国の石油需要の増加のほか、さまざまな要因が複合して起きた。産油国の原油生産能力も、最大の市場である米国の石油精製能力も、余裕がほとんどない。こうした追加供給余力の乏しさも需給逼迫(ひっぱく)懸念を強める先物市場で買い材料にされてきた。

 原油先物や、それを組み込んだ商品指数連動ファンドなどが、機関投資家の投資対象となった影響も大きい。原油先物が金融商品化した結果、価格形成のあり方も変わった。

 景気減速に伴って当面の世界の石油需要見通しが下方修正されるなかで、原油は今年に入っておよそ4割も急騰した。その背景としてドル売り・商品買いをセットにした先物投資の広がりが指摘できる。

 緊急会合に合わせてサウジは原油生産能力を5割拡充する用意を示した。共同声明が原油急騰に関連して金融市場の透明性向上や規則改善の必要性に言及したのも妥当である。問題は市場の反応だ。

 サウジの中期の生産能力拡充は、すでに市場ではある程度織り込んでいた。他の産油国ももっと明確に能力拡充投資の計画を打ち出さなければ、インパクトは弱い。

 日欧や産油国の認識がほぼ一致し共同声明が金融市場の問題にも踏み込んだのに、米政府は投機が原油価格を押し上げている証拠はないと、あいまいな姿勢を続けている。これでは市場が、過熱気味のドル売り・商品買いに米当局が強い対抗策を打ち出せないと読むだろう。

 新たな金融不安につながる恐れがあるような先物投資規制策の発動は難しいとしても、米当局は先物市場での投資家の分類の細分化など市場の透明性向上につながる対応は早急にできるはずだ。

 一方、中国政府は先週、ガソリンなどの国内販売価格の引き上げを発表した。国際価格上昇に対応した価格改革の一歩といえるが、石油消費の伸びを抑える効果は必ずしも期待できない。インフレ対策とのかねあいもあろうが、財政補助金をもっと減らし、価格効果によって省エネと石油需要抑制が進むような改革を中国はさらに進めるべきである。

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