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エコナビ2008:「骨太の方針08」原案 医療制度改善…「聖域」容認で改革後退

 <ECONOMIC NAVIGATOR>

 ◇医療制度改善、少子化対策…

 政府の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)が23日まとめた「骨太の方針08」原案は、高齢者や医療、少子化対策などを社会保障費の抑制目標(年平均2200億円)の枠外に置く「聖域化」を容認した。「歳出改革のシンボル」としたはずの社会保障費抑制のタガを外したことで、解散・総選挙をにらむ与党からの歳出圧力が一段と高まるのは必至だ。また、「消費税を含む税制抜本改革の早期実現」にも言及したが、時期などは明示せず、財政再建路線が揺らぎはじめている。

 「強い(歳出圧力の)暴風雨が早い段階から吹き荒れた」。大田弘子経済財政担当相は諮問会議後の会見で、与党との原案をめぐる厳しい調整を振り返った。

 18日の自民党厚生労働部会では「医療崩壊は明白。社会保障の行方は我々の政治生命に直結する」と政府の社会保障費抑制方針の撤回を求める声が充満した。諮問会議は前日に示した「骨太08」素案で、後期高齢者医療制度の改善や救急医療、医師不足、少子化対策などを「重要課題」と明記。社会保障費の抑制目標から外して予算措置する配慮をしたが、族議員は満足しなかった。勢いづく厚労族は予算編成に向けては高齢者医療費の自己負担の更なる軽減を求める方針で、党内では「政府は09年度の社会保障費抑制を断念するのでは」との声も出ている。

 「社会保障の聖域化」は他の分野の歳出圧力を増幅させた。教育予算では、7000億円もの費用が掛かる「将来の幼児教育の無償化」を明記。教育予算の全体の大幅増額要求も原案では退けられず、27日の「骨太08」決定まで決着がもつれ込んだ。さらに、冬柴鉄三・国土交通相は資材高騰を理由に公共事業の前年度比3%削減方針の緩和を迫る。

 「無駄の排除や政策の棚卸し(優先度の低い既存の政策経費の改廃)」を頼みに新規政策を次々に盛り込んだ骨太原案。大田経財相は「歳出改革は揺らいでいない」と強調したが、歳出・歳入一体改革を目指した「骨太方針」が変質したことは否めない。【須佐美玲子、三沢耕平】

 ◇予算編成は難航必至

 歳出・歳入一体改革をめぐる政府・与党内の攻防は今後、夏からの09年度予算編成や税制の抜本改革議論に焦点が移る。ただ、骨太08は、歳出削減、税制改革双方の具体像を示さなかったため、調整は難航しそうだ。

 財務省は7月下旬から8月上旬の「概算要求基準」(シーリング)策定を皮切りに、09年度予算編成に着手する。8月末にはシーリングで示された予算上限額に沿って、各省庁の予算要求が提出される。だが、予算編成の指針となる骨太08は個別分野の削減目標に触れなかっただけでなく、一般財源化する道路特定財源についても具体的な改革の道筋を示さなかった。

 財務省がシーリングで前年度並みの歳出削減枠をはめても、どこまで拘束力を保てるか不透明だ。与党の歳出圧力が収まらなければ「決着が年末の予算編成までずれ込みかねない」(財務省幹部)状況にある。骨太08は財務省に「無駄ゼロや政策の棚卸し徹底」も求めた。だが、同省が実施する「予算執行調査」による無駄抑制額は、08年度で335億円に過ぎず、新たな財源捻出(ねんしゅつ)は困難が予想される。

 一方、自民党税制調査会と政府税調は例年より大幅に時期を前倒しして7月から税制改正論議を始める。自民党税調内には、09年度の基礎年金の国庫負担率引き上げに約2兆3000億円の財源手当てが必要なことから、早期の消費税増税を探る声もある。しかし、解散・総選挙を意識する与党内は「国民の反発を招く増税に触れるのは時期尚早」との声が大勢を占め、党税調も動きづらい状況だ。【清水憲司、赤間清広】

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 ◆09年度予算編成に向けた主な日程◆

6月 23日    「骨太の方針08」原案提示

   27日    「骨太の方針08」閣議決定

7月  1日    自民党税調総会

    3日    公明党税調総会

  7~9日    北海道洞爺湖サミット

7月中       政府税調が税制議論開始

7月下旬~8月上旬 09年度予算の概算要求基準(シーリング)決定

8月中       臨時国会召集

8月末       09年度予算の概算要求締め切り

11月       政府税調答申

12月       与党税制改正大綱決定

          09年度予算の政府案決定

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 ■ことば

 ◇骨太の方針

 「経済財政改革の基本方針」が正式名称。首相が議長を務める「経済財政諮問会議」が毎年夏に策定する。翌年度予算編成の方向性が打ち出される。01年に発足した小泉内閣が官主導だった経済運営を政治主導に切り替える目的で導入した。諮問会議は、首相のほか、官房長官、経済財政担当相、財務相、総務相、経済産業相の5閣僚と日銀総裁、民間メンバー4人で構成。06年度の「骨太の方針06」では国の財政再建のため、07年度から5年間で社会保障費の自然増の抑制も含めて最大14兆3000億円の歳出削減を行う方針が示された。

毎日新聞 2008年6月24日 東京朝刊

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