手を替え品を替え後を絶たない。全国の国税局の強制調査で二〇〇七年度中に摘発された脱税は二百十八件、総額は前年度より四十九億円増の三百五十三億円に上った。
個人投資家に人気の高い外国為替証拠金取引(FX)の運用益を申告しないなどの摘発が急増した。国際取引に絡む事件も多く、資金を海外口座に隠す手口も見られたという。
脱税した現金や貴金属などの隠し場所も車庫や浴室、離れの床下などさまざまだ。現金の入ったトランクルームや金庫の鍵を鉄道模型の中や、タンスにつるした防虫剤に隠していたケースもある。強欲さに開いた口がふさがらない。
摘発に当たった国税局査察部は通称「マルサ」で知られる。来月で制度発足から丸六十年を迎える。国税査察官は脱税の情報を幅広く収集し、疑いが強まったものについて強制調査に及ぶ。巧妙化する脱税者の手口としのぎを削ってきた。
税金は国民生活を支える大切なものである。公正に集めて有効に施策に反映してこそ、税の意義が生きてこよう。そのためにも脱税行為は、行政サイドの税の無駄遣いや不正流用とともに厳しく正していくことが求められる。
国民の納税意識に水を差してはならない。不正の根絶へ、「還暦」を迎えるマルサの一層の奮起に期待がかかる。