◎北陸の景況感 企業実感に近い「過去最悪」
これは企業経営者の実感に極めて近い数字だろう。北陸財務局の法人企業景気予測調査
で、北陸企業の景況感が過去最悪となり、景気の下振れリスクが数字ではっきりと示された。企業心理の悪化がこれ以上続くようなら、本格的な不況に突入しかねない。自治体や経済団体などは危機感を共有し、国に対して景気重視の政策を求めていく必要があるのではないか。
景況感悪化の理由は、先行きの不透明さである。サブプライムローン問題に加えて、未
曾有のエネルギー・原材料高が企業収益を圧迫し、投資行動に急ブレーキがかかり始めた。私たちは、これまで景気は各種経済統計の速報値以上に悪化していると指摘してきたが、数値がようやく現実に追い付いてきたという印象である。今ここで、消費税の引き上げなど景気に悪影響を及ぼすような政策論議を封印しないと、企業はもとより、国民全体の心理を冷やすことになるだろう。
北陸財務局の四―六月期の景況判断指数(BSI)は、全産業でマイナス三〇・八だっ
た。現行の調査は二〇〇四年四―六月期にスタートしたばかりだが、マイナス幅が大きく、二期連続で最悪になった事実は重い。次の七―九月期は、改善を見込んでいるとはいえ、底打ちを確信させるほどの強い数字が出るとは思えない。少なくとも指数のマイナスは、しばらく続くだろう。
企業心理を悪化させているのは、エネルギー・原材料高がどこまで続くか見当がつかな
いばかりか、上昇分を商品価格に転嫁できる業種が限られている点にある。中小零細企業は言うに及ばず、輸出が好調な大手の製造業ですら売り上げは増えているのに、利益が大幅に減るという現象が起きている。これまで北陸の景気をけん引してきた電気機械や一般機械などの輸出関連企業の業績がさらに落ち込むようなことがあれば、設備投資や新規求人への影響は避けられまい。
一度、下振れした景気を元に戻すのは容易ではない。政府・日銀は、市場に明確なメッ
セージを送るタイミングを見逃さないようにしてもらいたい。
◎低炭素社会の構築 原油価格高騰をテコに
石油輸出国機構(OPEC)の加盟国と、石油輸入国の日本、欧米、中国など三十六カ
国による緊急閣僚会合で、サウジアラビアが生産能力を現在の一・五倍に引き上げる方針を明らかにした。が、まだまだ先の話であり、生産能力を高めると表明したのがサウジ一国では当面の原油価格引き下げにはつながらないというのが一般的な見方である。
今の原油価格高騰について「第三次石油危機」であるとの懸念がある。世界全体の国内
総生産(GDP)総額に対する原油購入費の割合が過去最高だった第二次石油危機時の一九八〇年の7・3%に近い水準に迫っているからである。日本は二度にわたる石油危機を省エネ技術の開発で乗り切り、世界の模範とされた。今度もさらなる省エネ技術で対応したい。原油価格高騰という危機をテコにして科学技術で乗り切るのだ。
福田康夫首相は先に発表した「福田ビジョン」で、地球温暖化ガスの排出量が小さい「
低炭素社会」の実現を目指すことを打ち出し、そのために柱とする四つの政策の一番目に「革新技術の開発」と「既存の技術の普及」を掲げた。低炭素社会に向けた取り組みは、今月下旬に閣議決定する「骨太の方針二〇〇八」にも重要政策として盛り込まれるが、政府の積極姿勢を評価する。
地球に優しいエネルギーの開発と利用を追い求めている科学者たちの提言を踏まえて、
私たちは二十一世紀型ともいうべき科学技術を発展させたいと主張してきた。すなわち、太陽のエネルギーを取り込む「太陽電池」、この電池を有効に利用するために不可欠な「リチウムイオン電池」、「電気自動車」、「水素をエネルギー源とする製鉄」等々の研究と普及を挙げたのである。
新興国の中国やインドがポスト京都議定書の温暖化ガス削減の義務化に反対なのは、省
エネ技術が未熟だからだ。彼らにしても高価な原油消費を続けたいと思っていないのだ。科学技術に回答を求める取り組みこそ大事にしていきたい。それが日本が世界に貢献していく道である。